「匡、結月ちゃんと俺の自己紹介は端折るぞ」
「あっ、はい。結月のことは昔から知ってるし、飛鳥井さんとも昼間に話しを聞いて理解してるつもりなので大丈夫です」
「オーケー。では、君にチームへ加入してもらうために詳しく説明させてもらうとしよう」
飛鳥井さんには悪いけど、本当のところはこれ以上説明を受けなくても心は決まっていた。
理由は当然と言えば当然なのだが、このチームに結月が加入しているからに他ならない。
では何故、敢えて加入の意思を飛鳥井さんに告げないのか?
それは結月以外のメンバーの情報やチームの事をもっと知っておきたかったらだ。
「このチームは俺と柴門の二人だけで始まったんだ。と言っても、一月前までは互いに顔も名前も知らなかったんだけどね」
ここまで飛鳥井さんが話し柴門さんの方へ目線を送ると、柴門さんは腕組みしながら黙って頷いた。
「柴門とどうやって知り会ったかを説明すると話が長くなるから割愛させてもらう。とにかくコイツと二人で行動するようになったのは、大学内に人間を標的にする人間で構成された組織の存在があったからなんだ」
んん?僕の聞き間違いでなければ、今、『人間を標的にする人間で構成された組織』って言ったよな…
「すみません、飛鳥井さん。それって人間を襲う人間が集団で大学内に居るって事ですか?」
「そういう事だ。本当は考えたくもないけど人間狩りをする人間達が確かに存在している。100人以上が集まり組織化された集団としてね。人から聞いた話によれば組織のボスは元死刑囚らしい」
もしかして飛鳥井に聞いた囚人達の暴走から派生している事象なのか?…
「まぁこの話は追々するとして、俺と紫門は大学を出たあと直近の別の大学へ向かったんだ。その辿り着いた大学で今度は凶暴化した動物に囲まれていた八神さんを見つけてね。二人で助けて合流したってわけさ」
飛鳥井さんが話を切ったタイミングで八神さんが口を開く。
「いやぁ、あの時は本当に死ぬかと思ったよ。まだ鉄の錬金術も使えなかったし…二人に助けられるのがあと数秒でも遅れていれば、手に持っていた青酸カリを飲んでしまっていただろうからね」
八神さんの右隣にいる柴門さんが驚いた表情をして言う。
「そんなもん持ってたのかよ八神さんは。で、その青酸カリはもちろん捨てたんだろうな?」
スッと無表情になった八神さんが答える。
「いや、捨てずに肌身離さずいつも持ってるよ。この先いつ必要になるか分からないからね」
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