僕達の世界線は永遠に変わらない [まともな食事]

僕達の世界線は永遠に変わらない

シェルター内には我が家の地下室と同じく巨大な蓄電池があり、エアコンが稼働していて適度にひんやりとしている。

 因みにここの蓄電池は、人力や風力で起こした電気も蓄積できるそうで、そのための設備も整っているらしい。
  
 葵さんがライスの盛られた最後の皿を長テーブルに置き、他の六人に声をかける。

「はい、準備完了!みんな集まって~、夕食にするわよ~!」
 
 長テーブルには各自の指定席があるのか、バラバラと移動しながらもスムーズに全員が着席した。

「匡はわたしの隣だよぉ」

 僕は結月に呼ばれ端っこの席に座る彼女の左隣に座る。

 長テーブルには七人分の料理が均等に並んでいて、目の前にはライス、ハンバーグ、シチューが置かれていた。
 付け加えると飲み物はペットボトルに入ったミネラルウォーター。

 久々にまともな料理を目の当たりにした僕の口の中には、溢れんばかりの唾液が溜まり出す。
 良く考えれば、一カ月ぶりに我が家で食べた物といえば、桃缶とポテチのみでまともな食事などしていなかった。

 周りを見るとそれぞれが思い思いのやり方で、食事時の「いただきます」の挨拶を終え既に食べ始めている。
 
「結月…僕はてっきりみんなが集まって食べるものだから、一斉に「いただきます」して食事を始めるのかと想ってたよ。…もう僕も食べ始めちゃっていいかな?」

「フフフ、ここに居る人達は個性派揃いだからねぇ…あっ!どうぞどうぞ食べちゃってぇ」

「いっただきまーーーす!!!」

 僕は限界寸前の食欲をとにかく満たすため、周りを気にせずガツガツと食べ始めた。
 
「んまい!んまい!、ゴクゴク、んまいんまい!、ゴクゴク」

 といった具合に、口いっぱいに料理を詰め込んでは水を飲んで流し込む。この繰り返しで「んまい」と言いながらも味は良く分かっていないまま食べてしまい、1分とかからずに完食してしまった。

 ペットボトルに残っていた水を一口で飲み終わり、周りがシーンとなっていることに気付き見渡すと、全員がポカーンと口を開けた埴輪顔で僕の方を見ている。

「…す、凄い食欲ねぇ匡君…まるで何日も食事をしていなかったような食べっぷりだったわぁ」

 みんなと同じく、驚きで埴輪顔になっている葵さんがそう言った。

「葵さんの想っている通り、実を言うと僕がまともに食事を摂るのは一カ月ぶりなんですよ。まぁこれには深い事情があるんですけど…」

 病気の治療についての話を始めようとしたところへ、埴輪顔から素の顔に戻った飛鳥井さんが僕を止める。
 
「おっとそこまで!折角だから、自己紹介と合わせてその辺のこともみんなに説明してもらおうかな?」

「分かりました。では、改めまして…皆さん。僕は阿笠匡って云います!」

 こうして僕はその場の全員に向けた自己紹介と、病気の治療を含めたここまでの経緯を簡略的に説明したのだった。

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