「お願いします」
「チームの目的はズバリ！全生命体が共存できる世界の構築！…と高い目的を掲げてはいるが、現状は徒党を組んで何とか生き延びようとしているだけかな…」
飛鳥井さんが初めて自信なさげに話し尻つぼみになって行ったけれど、僕はその前向きな内容に嬉しさを覚えていた。
「いえ、生意気言って申し訳ないですが、その考えは凄く立派だと思います。僕は飛鳥井さんの話を聞いただけで現状を余り把握していませんけど、やっぱり生き残らなければ何も始まりませんから」
「若いのに良いこと言うねぇ。そう、とにかくチームのメンバーは生き残るために偶々集まった同士達なんだよ。もちろん、全生命体が共存できる世界の構築という大きな目的の元にね…一応さ、拠点になるアジトを作ってあるんだ」
「アジト」って言葉も現実世界では余りなじみがないな。秘密組織の隠れ家みたいなものか…
「そのアジトって何処ってどこか遠くに在るんですか？」
「いや、そんな事はない。この住宅街の中に在るよ～、近いだろ？」
「えっ！？この住宅街に？」
「そうだよ。近すぎて意外だったかな？ある一軒家の地下にあるシェルターをアジトに使わせてもらっているんだ。メンバーの一人が家の持ち主の子供なんだけどね。今から君も行ってみるかい？他のメンバーに会って話を聞いてから、チームに加入するか否かを決めても良いんじゃないかな」
そう言えば、この住宅街には地下シェルターを造っている家が何軒か在るという事を親父から聞いたことがあった。もっとも多くの自家用シェルターが造られ時期は、過去に北朝鮮が核ミサイルの実験を頻繁に行い、それを恐れた富裕層の人達が新築の家を建てた時だったらしい。
おっと、それより今はチームの話だったな…
「是非そうさせてください。生きている人間にもっと会って話を聞いてみたいです」
「よし！じゃあ決まり！早速瞬間移動で…いや、折角だから場所を覚えてもらうのを兼ねて歩いて行こうか。俺の後ろをついて来て」
「あっ、はい」
こうして僕は飛鳥井さんの後ろを歩いてアジトへ一緒に向かった。
我が家とは逆方向に焼けそうなアスファルトの道をスタスタと歩きながら、最初の目的地の煙の上がっていた場所に目を向けると、だいぶ薄くはなっていたがまだ煙は見えていた。気になるな…
「飛鳥井さん、あの煙の上がっている場所で何があったのか知っていますか？」
「ん？ああ…あの煙は君に会う前まで俺がカラスの集団と一戦を交えていた場所だよ。人を救おうとしたんだが間に合わなかった…」
飛鳥井さんはそう言って神妙な面持ちになったのだった。
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