それ以降はわたしの困る場面も無く夕食が終わり、酔いでちょっとフラフラしながら部屋へ戻って布団の上に寝転んだ。
手足を伸ばし大の字になって独り言を呟く。
「ふぅ…今日は色々あり過ぎよねぇ…フフフ」
今日一日あったことを頭に想い浮かべ振り返ると、自分のことが可笑しくなって自然に笑いが溢れて来た。
どうやらお酒による酔いは継続しているらしい…
次第に心地よい眠気が忍び寄り、わたしは眠りに就いて行ったのでした…
「Zzzz……」
「……さん。起きてください」
ん?男の声?誰かがわたしを起こそうとしている?
目を開けると、竹刀を手に持った樹様がこちらを覗き込むようにして見ていた。
「貴方との交際を申し込みに来ました。さぁ、剣術で勝負しましょう」
なっ!?交際?寝起きに何をいきなりおっしゃっているのかしら…
困惑しながらもわたしの口が開き返答する。
「良いですわぁ。その勝負受けて立ちましょう」
すると場面が部屋から道場に一瞬で切り替わり、樹様の服装は変わらず道着姿のままだったけれど、わたしもいつの間にか寝間着から道着姿になっていた。
お互いが道場の中央に対面して立ち竹刀を構える。
「では参ります!キィェイ!」
わたしが気合の声と共に上段、中段、下段の攻撃をランダムに繰り出す。
それを樹様が竹刀による受け流しと綺麗な足捌きでヒラリヒラリとかわす。
「流石ですわぁ、樹様の体捌きは綺麗で見惚れてしまいますぅ」
…ん?待て待て加賀美司。
攻め手を綺麗にかわされてなぜ嬉しそうに言っているのだ?
「ハハハ、いやいや司さんの攻撃は避けるので精一杯だよ」
樹様にしても試合中なのに満面の笑顔でそんなことを言っている…
「樹様の実力は十分わかりました。もう試合なんてどうでも良いですわぁ。竹刀なんてこうですぅ。フフフ」
わたしはそう言って竹刀を放り投げた。
「そうか、わかってもらえて良かったよ~。ならば俺も竹刀はこうだ~!」
と樹様も竹刀を放り投げてしまった。
そしてなんと!わたしと樹様が手と手を取り合い飛び跳ねるように踊り出す。
「アハハハ」
「ウフフフ」
二人が目と目を合わせ笑い合った。
なんだろうこの不思議な感じ…訳がわからないけど楽しい気分なのは間違いない…
「……様~!」
あっ!?真琴さんの声が聴こえる…
「司様~!起きてください!お時間ですよ~」
はっ!?もしかして!?
わたしは目を覚まして布団から起き上がり頬をつねる。
「痛い…」
今が現実でさっきまでのは夢だったのね…それにしても変な夢だったなぁ…
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