「今はテレビやネットからの情報収集が出来ない状況だ。だから得られる情報は限られているけどナインスセンスは全ての生命体に発動していると想う。無論、覚醒する能力はベースになる生命体によって異なるけどね」
そっか…やっぱり電波も止まってしまったのか…
「僕はついさっきまで化物のようなカラスと闘っていました。その最中に自分の身体に異変が起こっているのは分かったんですけけど…」
「ハハ、知ってるよ。実はその一部始終を木の影に隠れて観させてもらっていたんだ」
「えっ!?観てたって…だったら何で助けてくれなかったんです?」
「君がどんな能力の持ち主か確認したいと思ってね。もちろんピンチになったら助けに入るつもりだったよ」
「いやいやいや待ってください!腕を噛まれて千切れそうになったんですよ!紛れもなくピンチだったでしょ!?」
「あ、ああ。そうだったかも…でもこうして無事なんだし、君も自分の能力を引き出せたんだから結果オーライということで」
飛鳥井さんは平然とそう言ってニンマリとした。
し、信じられない。僕は命をかけて闘っていたというのに…
「それに観ていて分かったんだが、ハッキリ言って君のナインスセンスはチート級でかなりやばい!」
あっ、この人、助けに入らなかったことを有耶無耶にするつもりだな。
でもチート級の続きは気になる…
「君のパンチを放った時にカラスの頭が一瞬で消えてしまっただろ。あれはきっと物理的な打撃によるものではなく、ナインスセンスで消滅させたものと考えられる。そうだ!試して欲しいことがあるんだ。そこの木の傍に立ってくれないか?」
「あっ、そこの木ですね」
取り敢えず言われるがまま腰を上げて隣にある木に近寄る。
「じゃあ、その木を拳でおもいっきり殴ってみてくれ」
「わかりました。おもいきり殴ればいいんですね」
木を殴ったらカラスを殴った時のような現象が起こるのだろうか?まぁやるだけやってみよう…
僕は右手に力を入れて拳を握り締め、大きく振りかぶって木に殴りかかる。
「せーーーのーーーっ!」
「ボグォッ!」
「いっでーーーーーっ!」
骨が折れたかと思うほどの激痛が右手に走っただけで、殴られた木は微動だにせず何の変化も見られなかった。
「ふむ、予想通りの結果だな」
飛鳥井さんがあっけらかんとした顔でそう言う。
「はぁっ!?予想通りってなんですか!?予想通りって!こっちはめちゃくちゃ痛い思いをしてるんですけど!」
「よし!今度はその木を破壊するつもりで殴ってみてくれ。でも良いかい、いま痛い思いをしたことは一切忘れ去るんだ。肝心なのは頭の中で木を破壊するイメージだけを想い浮かべること!」
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