男はそう言うと僕の隣に移動して木にももたれかかる。
「まずは自己紹介をしないとな。俺は飛鳥井晴明(あすかいせいめい)って云うんだ。よろしく!」
「あ、よろしくお願いします。僕は阿笠匡って云います。あのぉ、チームって何ですか?」
チームにスカウトすると言われ、頭の中にはバスケットなどのスポーツ系チームへの勧誘くらいしか想い浮かばなかった。
「こんな危ない世界になってしまったんだ。一人で生きるのは無理というものじゃないか?俺達はこの世界で生き抜くためにチームを作り始めているんだよ」
危ない世界?やはり僕が治療を受けているあいだに世界は変わってしまったのだろうか…
「すみません。そのチームに加入するかどうかは別として教えて欲しい事があります」
「ん?ああいいよ。なんでも訊いてくれ」
僕は飛鳥井さんへの質問をする前に、病気の治療からここまでの経緯を端的に説明した。
「へ~、一カ月も寝ていたのか…それじゃあ「神の戒告」についても知らないのかな?」
「神の戒告?」
「…まだ明確なことまでは分からないが、世界がおかしくなり始めたのは7月24日に起こった神の戒告がきっかけらしい…君が眠っているあいだに不思議な声が聴こえなかったかい?」
あっ!?もしかしてあれのことか?
「そう言われれば…一度だけ女性のような声で「地球に存在する」なんちゃらって云うのが聴こえたような…」
「それそれ!神の戒告とは正にそれだよ!世界中に異変が起こったのはその日からなんだ」
「…その日から何が起こったっていうんですか?」
「話が長くなってしまうが良いのかい?」
「全っ然構いません!お願いします」
僕にとっては煙の上がる場所に行くより飛鳥井さんから話を聞いた方が有益に思えていた。
「そうだなぁ…まずは、神の戒告が聴こえたのは7月24日午前零時のこと。俺はいつものように朝の7時に起きて、朝飯を食べる時にテレビをつけた。眠気が少し残っていたんだが、ニュース番組を観て一気に眠気が吹っ飛んだよ」
話し始めた飛鳥井さんのテンションが落ちて行くのを感じる。
「ニュースの内容は日本各地にある動物園からのライブ中継で、動物達が早朝から暴れ出しているというものだった。その中継中に惨劇が起こってしまう…カメラに向かって話す男の報道員が突然ライオンに襲われたんだ。襲われた報道員とカメラマンの絶叫が聴こえたあと、カメラを落として壊れたんだろうな、現場の映像と音声が途切れてテレビ画面がスタジオに切り替わったんだが、ニュースキャスター青ざめた顔でしどろもどろになっていたな…」
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