午前中の授業が終わり昼食時間になると、決まって恒例の弁当行事が始まる。
「宝城さんのお弁当はいつ見ても豪華ですわね~」
「オホホホ、そうかしらぁ。わたしはそうは思ってないのだけれどぉ。そう言う花山さんのお弁当も勝る素晴らしく豪華ですわねぇ」
「あら、そうかしらぁ。宝城さんに褒めてもらって光栄ですわぁ。オホホホ」
宝城薫(ほうじょうかおる)と花山玲子(はなやまれいこ)の両名は、この上流階級の女学生が集まる学級の中でも一二を争う富豪のお嬢様。
宝城薫は、その確かに美しい顔と高飛車な性格から容易に想像できる典型的なナルシスト。
花山玲子もタイプこそ違えど美しく、宝城薫のグラマーな体型に比べて華奢で清楚な感じ。
まあどちらにしても、上流階級のお嬢様を絵に描いて更に輪をかけたようなお嬢様だ。
昼時になると毎回毎回飽きもせず、お互いの弁当やら何やらを褒めちぎる。
そんな二人の周りに数名の取り巻きが加わり、10名ほどのグループで賑やかにお弁当を食べていた。
わたしと親友の千歳は二人でお弁当を食べながら、その光景をいつも冷やかな目で見ている。
「あそこは相変わらず賑やかねぇ。お弁当くらいもう少し静かに食べられないのかしら」
千歳がグループを本当に冷たい目をしてそうボヤく。
「まあ良いんじゃない。もういい加減わたしは慣れてしまったわ。そんなことよりお弁当を味わって食べましょうよ」
わたしは美貌と剣技において絶対の自信を持っている。だからあの二人がいくらはしゃいでいようと気にならない。No. 1は常に余裕を持っていなきゃね♪
賑やかな昼休みが終わると午後からはわたしの得意とする習字の授業が始まった。
剣も習字も研ぎ澄まされた集中力が必要なのは同じ。意外?にも達筆なわたしの字は、教師の神楽坂先生にも習字の授業がある度に褒められる。
「加賀美さんの字はいつ見ても惚れ惚れしてしまうわねぇ。日頃から練習を欠かしていない証拠ね」
「そ、そうですか。ありがとうございます先生」
いえ、神楽坂先生。習字は授業でやるだけで、それ以外で練習なんか一度もしたことはありません。とは流石に言えなかった。なんか申し訳ありません!実は才能だけで書けちゃってるんです~!
午後の授業が終わったあとは、数名は学校に残る人もいるけど、他のみんなはそれぞれ帰るだけ。
掃除などは学校側が雇っている人がしっかりやってくれるのです。
「司~!お迎えが来てるから帰るわね。さようならまた明日~!」
「うん!また明日~!」
千歳と挨拶を交わし、校門前で待ってくれていた伊達さんの人力車に乗り込んだ。
何事も無ければ、普段の学校生活はこんなサイクルなのである。
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