世界樹とハネモノ少女  「力と力」

世界樹とハネモノ少女

「ババン!」


 突如としてフィンの両腕が動き、掌を床に叩きつけその反動で立ち上がった!
 確認しようと近づいていた審判員が慌ててその場を離れる。
 選手控え席のサカズキが驚きの表情を浮かべて言う。


「あの兄ちゃんまだ闘うつもりか!?双剣は使い物にならなくなってるんだぞ…」


 フィンの鉄の双剣は耐久力の限界が来ていたのか、ミアの魔法によりバラバラと言っていいほど砕けていたのである。
 準決勝でミアと死闘を繰り広げ、最後に拳による打撃で敗れたナーシャが呟く。


「己の身体を武器にして闘うつもりね…」


 このナーシャの予想は直ぐ的中することになる。

「ぬぅああああああああああ!」


 武器を持たないフィンが、拳を握った両腕を胸の前でクロスさせ叫んだ。


「はあっっ!!!」


「ボォ!ボウッ!」


 倒れた時に消えていた青白いオーラが復活し、以前より勢いを増して身体を包み込む!


「凄い。たぶんこれが彼のフルパワーね…なら!」


 フィンの様子を見ていたミアが銀の剣を試合場の隅に放り投げ、フィンと同じように構えオーラを練りだす。


「ふうううぅ…はあっ!」


 今迄より大きな橙色のオーラがミアの身体を包み込む!

「やっぱり君の力は相当なもののようだね。でも最後に勝つのは僕だっ!」


「いいえ、勝つのはわたしよ!」


 二人が互いに向かって疾風の如く駆ける!

「ガッ!ドガガガガッ!」


 ミアは握り拳、フィンは手刀で攻撃を繰り出し激しくぶつかり合う!
 二人の動きを目で追えている者は観戦客の中にはもはや居なかった。
 恐らく二人の動きが見えていたのは剣聖七葉の七人と、選手控え席のサカズキとナーシャくらいのものであろう。
 剣聖七葉副長のワイバードが二人の動きを目で追いながら溢す。


「攻撃速度が剣を振る速度より速い…」


 となりでジッと観ていた剣聖七葉統括長のシャナンが口を開いた。


「そうだな…格闘術を学んでいない二人の動きはまるで素人の様だが、そのスピードとパワーは人智を超えているようだ…」


「ドン!」

「ぐっ!?」


 ミアの右の拳がフィンの頬を直撃した!更に左の拳で逆の頬を殴る!


「ドン!」


「ザクッ!」


 ミアの右の胸部にフィンの左腕の手刀が突き刺さった!

 だがミアは怯まず拳を撃ち続ける!


「ドドドドドドドドドドッ!」


 右胸部の手刀が抜け、ミアの連打が防御しないフィンの身体に次々と当たる!

「これで終わりーーーーーーっ!!!」


「ドン!!!」


 渾身の正拳突きがフィンの顔面を真っ直ぐ捉え、試合場の端まで吹き飛ばし、まるで人形のように力なく床に叩きつけられた。

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