サカズキがフィンに握手を求め手を差し出す。
「お前さん、口だけじゃなく本当に強かったよ。完敗だ」
「僕も貴方が予想外に強くて驚かされましたよ」
フィンはサカズキと握手を交わして試合場を出て行き、そのまま真っ直ぐミアの居る方へ向かう。
「君はあんなに大きな声が出せるんだね。しかも空気の衝撃まで伝わって最後に一瞬身体が固まっちゃったよ」
言われたミアが怒ったような表情をしている。
「わたしが叫ばなかったらあのままサカズキさんを殺すつもりだっんでしょ!?」
フィンがミアの言葉に眉をひそめた。
「君ね、いい加減にしてくれないかな。この大会のルールでは殺そうが何しようが相手を戦闘不能にすれば勝ちなんだよ。それを覚悟でみんな闘ってると思うけどな」
「ルールは知ってるわよ!でもあなたくらいの強さがあれば殺さなくても勝つ方法はいくらでもあるでしょ!?」
熱く話すミアに対しフィンは至って冷静に話す。
「君の言いたいことは分かった。でも次で最後の試合だ。僕は今までの闘い方を変えるつもりはないし、君も殺すつもりで闘わないと僕に勝つのは無理だよ」
そう言うとフィンはミアに背を向け闘技場の出口へ歩き出した。
「わたしはあなたを殺さずに勝ってみせるから!」
ミアはフィンの背中に向けてそう言って別の出口へ歩いて行った。
決勝戦は30分の休憩を挟んで行われる。
観戦客らはパラパラと席を離れトイレに行ったり、知り合いを見つけて話し始めたりと様々に動き出していた。
ミアは控え室には行かず闘技場内の治療室へ向かう。
準決勝で対戦して担架で運ばれたナーシャの様子を気にしていたのだった。
治療室に入ると、ナーシャがベッドの上に座って医療班の一人と話しをしていたが、ミアに気付き話しかける。
「あなた、もしかして心配して来てくれたの?」
ナーシャの意識が戻り、思ったより元気そうな顔を見て安心したミアがニコッと笑って答える。
「あ、はい!ナーシャさんが回復して元気そうなのでわたしは嬉しいです」
ナーシャは微笑み浮かべた。
「心配してくれて私も嬉しいわ、ミア。でも一つだけ教えてもらえる?」
「いくらでも訊いてください。ナーシャさんになら何でも教えちゃいます」
「フフフ、ありがとう。私の攻撃を受けて倒れたあなたが立ち上がった時、身体を突然覆った何かが見えたのだけれど、あれは魔法だったの?」
「ん~、っと。あれは魔法じゃないです。確か意識が朦朧としてて、頭の中に直接誰かの声が聞こえて来たんです。それから身体の中に不思議な力を感じて動けるようになりました」
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