【魔法をかけたなら】
小さな魔法使いのマリムはホウキに乗って町の空を飛んでいます。
「今日も天気が良くて気持ち良いなぁ」
そんなことを言いながら町を眺めていると…
片足を引きずりながら歩く猫を見かけました。
「猫くんその足どうしたの?」
不安そうな顔で猫が答えます。
「人にいたずらされてけがしたんだ」
可愛いそうに思ったマリムが魔法をかけてあげます。
「ナオーレ、ナオーレ、ナオーレ~!」
すると猫の足は治り、普通に歩けるようになったのでした。
「小さな魔法使いさん、ありがとう!」
猫はお礼を言ってどこかへ行ってしまいました。
それから1年後、マリムは原因不明の病気にかかってしまいます。
家族のいないマリムは一人ベッドの上で寝込みました。
魔法もクスリも効かないので、日に日に体が弱っていきます。
「きっとわたしはこのまま死んでしまうんだわ」
マリムはとうとう泣き出してしまいました。
泣きつかれて寝ていると…
「コンコン、コンコン」
窓を叩く音がきこえてきました。
マリムが体を起こして窓を見ると、外にはなんとあの時の猫が座っていたのです。
「久しぶりだね…猫くん」
猫は黙って口にくわえたものを差し出します。
「小さな魔法使いさん、このクスリを飲んでみて。きっと治るから」
猫はそう言うと窓から外に出て行きました。
次の日の朝、クスリのおかげでマリムの体はすっかり良くなりました。
ベッドから起き上がり、窓を見るとあの猫がいます。
「猫くん、あのクスリはどこで見つけたの?」
「毎日神様にお願いしてたらくれたんだ」
猫は助けられたあの日から、ずっとマリムを近くで見守っていたのでした。
「本当にありがとう猫くん!」
二人はそれから友達になり、ずっとずっと長いあいだ一緒に暮しました。
【勇気をください】
ある町の片すみには古くからおじぞうさまがおかれていました。
おじぞうさまにはふしぎな力があって、毎日のように人がおとずれます。
「今日はどんな人が来るのかな」
おじぞうさまはたのしみにして待っていました。
中学生の女の子がやって来ます。
「あの人に好きと言える勇気をください」
おじぞうさまは好きと言える勇気をあたえました。
杖をついたおじいさんがやって来ます。
「病院に行く勇気をくだされ」
おじぞうさまは病院に行く勇気をあたえました。
髪がボサボサの若い男の人が来ます。
「家族のためにはたらく勇気をください」
おじぞうさまははたらく勇気をあたえました。
おじぞうさまには人に勇気をあたえる力があったのです。
その日の夕方、目をはらした高校生の女の子がやって来ます。
「わたしに死ぬ勇気をください」
おじぞうさまは死ぬ勇気をあたえませんでした。
かわりに生きる勇気をあたえたのです。
それ以来おじぞうさまのすがたは町の片隅から消えてなくなりました。
【冬のぬくもり】
きせつはそとのくうきがつめたいさむい冬です。
ももちゃんは小学一年生の女の子。
学校からかえるとすぐにこたつに入ってしゅくだいをはじめます。
きょうはつかれていたのか、しゅくだいをおわらせるとねてしまいました。
こたつのあたたかさもあってきもちよくねていると…
「ももちゃーん、いっしょにおかいものに行くよー」
おかあさんのよぶこえがきこえました。
「はーい」
ももちゃんはこたつから出るのはいやだったけど、おかあさんといっしょに出かけました。
そとに出るとこたつのあたたかいせかいとはちがいます。
つめたいかぜもふいていてとてもさむいせかいでした。
あるいているとももちゃんの手がつめたくなります。
「おかあさん、手がつめたいよう」
「あら、手ぶくろをわすれちゃったのね」
そういうとおかあさんは、ももちゃんのつめたくなった手をりょう手でつつんであたためてあげました。
「こうするとあたたかくなるよ」
「うわぁあたたかくなった!」
ももちゃんはえがおでよろこびました。
かいものをすませていえにかえっていると、みちのかたすみに小さなダンボールがおいてありました。
「ニャー!ニャー!」
小さなダンボールから子ネコのなきごえがします。
ももちゃんとおかあさんさんがのぞいてみると、まっしろでかわいい子ネコがはいっていました。
「こんなさむい日にすてらたのね。かわいそうに」
「おかあさん、子ネコちゃんをおうちにつれてかえろうよ」
こうしてももちゃんとおかあさんは子ネコをつれてかえりました。
ももちゃんはいえにかえりつくとすぐにこたつをつけます。
おかあさんは子ネコのからだをぬるめのおゆであらってあげました。
タオルでふくと子ネコはきれいになってよろこんでいるようです。
ももちゃんがあたたまったこたつの中に子ネコを入れてあげると。
「ニャー」
とおれいをいわれたような気がしましす。
しばらくしておかあさんがこたつをみると、ももちゃんと子ネコはよりそうようにしてねていました。
きもちよさそうなねがおをみたおかあさんのこころも、ぬくもりを感じたのでした。
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