天才にして天災の僕は時に旅人「男の人魚のモディさん」

天才にして天災の僕は時に旅人

 どれくらいの時間が経っただろうか?たった二人でやる海中でのクイズ大会に僕は飽きていた。

 と言うか終わりにしたかったと言うのが本音である。

 何故なら芹奈の出す問題は僕がすぐ解答し、僕の出す問題に芹奈が悪戦苦闘するというラリーが続いた結果、彼女のイライラがMAX状態にある事が目に見えて明らかだったからである。

「なぁ芹奈。そろそろクイズはやめにしないか?」

「何を言ってるの!勝ち逃げする気かしら!?」

 だめだ。このままでは永遠に終わりそうにない。

 そう思ったその時!

「あれ!?君達は人間かい?」

 不意に右横から男の声で質問が来る。

 慌てて声のした方を見ると、髭面で上半身裸のマッチョな男の人魚がそこに居た。

 初めて女性の人魚のミューを見た時と違い、僕の胸は微塵もときめかず至って冷静に答える。

「はい、人間です。僕はキキで、こっちが芹奈と言います。あなたは男の人魚さんですよね?」

 髭面でマッチョな人魚がニコッとして返す。

「そう、その通りだ。俺は男の人魚でモディという名だ。しかし、君達は俺を見ても全く驚かないんだね」

「日本の沖縄の海で女性の人魚と接触して免疫があるんですよ」

 僕の言葉を聞いてモディさんが少し驚いた顔をする。

「君達は日本から遥々来たのか。ところで俺はフェロモンに引き寄せられて来たんだけど、女性の人魚は居ないのかい?」

 モディさんはメスのフェロモンに引き寄せらたという事に関しては特に恥とは思わないらしい。

「すみません、女性の人魚は居ませんよ。男の人魚を探すために女王様から貰ったフェロモンをばら撒いただけなんです」

「ガーン!」

という擬音が聞こえそうなくらいモディさんの顔がげっそりとなった。

 そんな露骨にガッカリされるとは…そうだ!

「あ、でも女性ならここに一人居ますよ!」

「最初に見て女性とは分かったけど人間の女性には興味ないんだ」

「失礼な人魚ね!わたしだってあなたに興味なんかないわよ!」

 芹奈がクイズ大会の鬱憤と一緒にモディさんに怒鳴ってしまった。

「じゃあさようなら」

 モディさんがしょんぼりとして幽霊のように海底谷に消えようとする。

「モディさんちょっと待ってください!女性の人魚の棲む海底都市に男性の人魚を連れて行かなきゃならないんです!」

 動きをピタッと止めて生気を取り戻したモディさんがこちらを振り向く。

「それは本当かい!?まさか俺を騙したりしないだろうね?」

「嘘は言いませんよ!」

 今の時点では限定1名様という事は伏せておこう。

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