試合を終えたミアが試合場から出ると、そこには次の試合に出場するフィンが居た。
「やあ!ミア。相手が大したこと無かったのもあるけど圧倒的な試合運びだったね。準決勝進出おめでとう!」
フィンの嫌味な言い方に表情の曇ったミアが返す。
「やっぱりわたしはあなたが嫌い。次の試合でせいぜい負けないようにね」
「ん!?僕は随分と君に嫌われてるみたいだねぇ。でも次の試合は楽勝だよ。じゃあ!」
そう言うとフィンは試合場に上がって行った。
フィンの対戦相手であるヨニバルの年齢は29歳で、山岳地帯にあるダルニムという村からの出場者である。
村周辺の魔物退治で名を上げ、村の勇者として村人から崇拝されていた。
身の丈2mの偉丈夫で、筋肉の固まりのような身体付きをしており、使う武器は戦斧の2本持ちといったスタイルである。
審判員が試合開始を告げる。
「用意!始め!」
先ほどのミアとスレイヴの試合と打って変わって、両者が全く動かない展開となる。
フィンに関しては鞘から剣を出してさえいない。
ヨニバルが攻撃を仕掛けない理由は、そういったフィンの姿を見ての事だった。
痺れを切らしたヨニバルが言う。
「どういうつもりだ少年。剣も出さぬ相手には攻撃しかねるじゃないか」
フィンが澄まし顔で返す。
「遠慮は入りませんよ。ガンガン攻めて来てください」
それを聞きヨニバルの眉間に皺が寄った。
「…剣を抜け!戦意の見えない者に攻撃など出来ん!」
「華麗な闘いぶりを見せたかったのに…仕方ないなぁ」
フィンは面倒臭そうな感じでようやく双剣を手に持った。
「おらぁーーーっ!」
ヨニバルが右手の戦斧を横に払い先制する!
その身体付きからはおよそ想像のつかない速さであったが、フィンはしゃがんでかわした。
しゃがんだところへ左手の戦斧が縦に襲いかかる!
「ガァツゥーーン!」
僅かだがフィンは左横に俊敏な動きでかわし、戦斧が空を切り地面を砕く!
反撃に転じ両手の剣で攻撃するのかと思いきや、右足でヨニバルの腹を蹴り上げた!
「ドゴォッ!」
「がはぁっ!」
短くうめき声を上げたヨニバルの身体が宙に浮き、5mほど飛ばされた!
倒れたヨニバルに向けて薄笑いしたフィンが言う。
「どうです。剣は必要なかったでしょう?」
「…….」
返事は返って来なかった。
ヨニバルはたったの一撃で気絶してしまったのである。
余りにも呆気ない結末に観戦客らが驚き黙り込んでしまう。
審判員がフィンの勝利コールをしたところで、やっと観戦客らが湧き上がったのであった。
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