「玉手箱と河童の情報…。目的を達成した暁にはありがたくいただきたいと思います」
微妙な褒美に対して微妙に喜んでおく。
「ミューには悪いのですが、今後も地上のあなた達との連絡はミューを介して行うつもりです」
それに関しては僕に考えがあった。
「女王様。連絡というか、僕達がこちらの海底都市に訪れる手段として別の方法があります。その手段を使えばミューさんの負担を軽減できますのでご安心ください」
実は僕の海パンの裏にはマイクロSDカードサイズの装置が張り付けてあり、この装置は地図に載っていない場所の位置さえも自動記録する優れ物なのだ。
この装置をテレポートボックスに取り付ければ、AIのアイネが読み取り海底都市にテレポートできるという寸法である。
人魚の女王様との謁見が済んだあと海底都市を軽く観光した。
目に映る全ての物が新鮮に感じ、美しく綺麗でずっと観ていたいと思ったものである。
地上への帰りは来た時と同じく、ミューさんが元の岩場まで連れて行く。
岩場に着き僕達が地上へ上がると、ミューさんが不安げな顔で訊いた。
「あの、女王様とどのような話しをしたのか訊かせて貰えないでしょうか? 」
女王様との会話を思い出しつつ、言葉を選んで返答する。
「ザックリ言うとですね。海底都市の繁栄のための情報収集を頼まれたんですよ」
ちょっとザックリ過ぎたかな。
「繁栄のために…。あ、そうだ次はいつお迎えに上がればいいですか?」
今の説明で納得したのだろうか?
「今後のお迎えは必要ありません。次はミューさんが驚くような方法で海底都市に行きますから」
ミューさんは頭の上にクエスチョンマークが出そうな顔をしていた。
「あ、とにかくまた会えますので心配は無用です」
「分かりました。また必ず会いましょうね。約束ですよ」
そう言ってミューさんは海底都市に戻って行った。
僕達もテレポートボックスでマンションへ戻る。
「キキ、コペンハーゲンへはいつ行くの?」
着いて早々に芹那が予定を訊いてくる。
「明日は仕事に集中したいだよなぁ。行くなら明後日だな」
「OK、じゃあ明後日の朝にまた来るわね」
マイペースな芹那は帰って行った。
「わたしは残念だけど暫く無理だわ。仕事の締め切りが近いんだよね~」
乙葉は日頃の努力が実り、少しずつではあるけれど漫画の仕事が増えているらしい。
「そっか、そればかりは仕方がないな。でも仕事優先で全然構わないよ」
これで明後日のコペンハーゲン行きは芹那と二人きりか…どうなることやら。
翌日は予定通り集中して仕事を片付ける事が出来た。
少し時間が余ったので芹那を見習う訳ではないが、人魚について調べてみると世界のあちこちに伝説がある事を知る。
そのお陰でちょっとだけ男の人魚にも興味が湧く僕だった。
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