「みなさん、あちらに見える城にわたし達を統べる女王シーアが待ってますので行きましょう」
「はい。でもこの二人の事は女王様に話して無いんですよね?大丈夫でしょうか?」
ミューさんが少し考える素振りをして質問に答える。
「きっと大丈夫ですよ。あなた方から悪意は感じませんし、ノストラダムスの予言の事を話せば分かっていただける筈です」
ノストラダムスの件を聞くと胸が痛くなるのは僕だけだろうか?
「もし女王様の反応が悪い時はわたしに任せて下さい!女王様を納得させるだけの話は他にも用意して有りますので!」
芹奈は嘘を重ねても胸が痛む事は微塵も無いらしい。
海底都市の中を歩きながら、風景や2本足で歩く人魚を眺める。
中には手を振ってくれる人魚もいて親近感が湧く。
しかし、揃いも揃ってお綺麗な方ばかりで、男の僕としては目のやり場に困るほどである。
一昔前に人魚の「ジュゴン見間違え説」が流行ったけれど、あの顔がでかくてごついジュゴンを人魚と見間違えた人間の視力は0.1以下だったに違い無い。
城に近づくと遠方から見た時よりは大きく見えたが、実際のところ普通の城の3分の1以下なのではないだろうか。
城の門は開けっ広げてあり、人魚の出入りがちらほらと見えた。
僕達は難なく場内に入り真っ直ぐ歩いて女王の間に着いた。
前方斜め上を見ると、他の人魚より格段に美しく威厳のある人魚がバブルに中に居る。
あれが女王様であるのは一眼見れば誰でも分かる事だろう。
「女王様、こちらが先日話しました人間の者です。そして、これがいただいた枝豆です」
ミューさんがずっと背中に背負っていたザルと一緒に枝豆を女王に献上した。
やはり想う…こういった世界観に枝豆は全く馴染まないと。
シーア女王が僕を見て言う。
「枝豆は感謝します。しかし、あなたの事は聞いているのですが、後ろの人間は何者なのですか?」
ミューさんが説明する。
「実はここにいる者達は人間界で超一流で最強の預言者ノストラダムスの予言により、海底都市の窮地を救うべく遣わされた3人なのです」
「超一流で最強の預言者ノストラダムス…」
芹奈が言った時は「最強」の2文字は無く、ミューさんにより付け足されていた。
「昔、薄らとですがノストラダムスの名は聞いた事があります。いいでしょう。あなた方を歓迎します」
「ありがとうございます。海底都市のために尽力いたします」
芹奈の用意していた作り話しを披露せずに済んだが、当の本人は悔しがっているように見えた。
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