試合のルールに則った行為とはいえ、あっけらかんと「殺してしまった」と言うフィン。
ミアは嫌悪感を覚えずにはいられなかった。
「フィン、あなたの名前は覚えたわ。じゃあね」
そう言って「ぷいっ」とフィンに背を向けミアはその場を去る。
「顔は爽やかだけどあんな風に言うなんて!」
お冠でもあったようだ。
次々と試合は消化されて行き、ミアもこれと言って強敵との対戦も無く、あっさりと決勝トーナメント進出を決めた。
他の試合場でも決勝トーナメント進出を決める者が現れる。 最後の試合はあのフィンと傭兵として有名なディンクという男だった。
「あの人の試合か…観る価値はありそうね」
ミアは試合場に近づき観戦する事にした。
フィンは通常よりやや短めの剣を両手に持つ双剣スタイル。
ディンクは右手に普通の長さの剣を持ち、左手には木製の盾を持つスタンダードなスタイルだった。「用意!始め!」
審判の合図で試合が始まった。
互いに攻撃の間合いとタイミングを計っているのか、手を出さずに動きを目で追っている。
フィンが先に動き右手の剣を振り下ろす!
「ゴォン!」
ディンクはしっかり反応し盾で受けた!が、一撃で盾にヒビが入っていた。
「速いし重い…」
観ていたミアの口から溢れる。
レオンの初手をキッカケに激しい攻防が繰り広げられ、観戦客も盛り上がっていた。
だが対等に見えた攻防は直ぐに終息へ向かう。
「バキィッ!」
ディンクの盾が呆気なく砕け散った。
フィンの速く重い攻撃を、そう何度も受けられる耐久性は無かったのである。
盾が砕け動揺したかと思われたディンクが、宙に舞った盾の破片をブラインドにして渾身の突きを放つ!
その剣先がフィンの顔に届かんとする瞬間!
首を動かし頬は斬られたもののギリギリでかわした!
「ザクッ!」
フィンは回避と同時に左手の剣でディンクの腹部を貫いたのである。
剣を引き抜くと、ディンクは前のめりに地に倒れた。
「勝負あり!勝者フィン!」
審判が勝利者の名を告げ観戦客が歓声を上げる。
そんな中、控えていた医療班がディンクに駆け寄り治癒魔法を駆使して治療に当たる。
この医療班は全試合で負傷者の治療に当たっており、致命的な傷を負ってしまった選手以外は医療班のお陰で助かっていた。
医療班の様子を観る限り、ディンクは一命を取り留めたようである。
勝者のフィンは剣の血を布で拭き取り鞘に収めると、涼しい顔で試合場を出て行く。
「まだ本気出して無い感じだなぁ…」
ミアはフィンの底知れない強さを感じていた。
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