暫く海底を進んでいると底の深そうな海底谷が見えて来た。
その谷に沿って更に深海深く潜って行く。
光の届かない深さはもちろん経験が無く、辺りは真っ暗闇で怖くもあった。
そしてもう一つの懸念が水圧だったのだが、この高性能バブルは水圧をものともしない。
一体何処まで潜って行くのだろうと思った矢先。
遂に待ち侘びた光が見えた。
光の方へ真っしぐらに進むと西洋にある宮殿のような建造物まで辿り着いた。
ミューさんが門のある所で停止して言う。
「ミューです。門を開けてください!」
門がゆっくりと開き中へと移動する。
入って直ぐに上昇し海面!?に一つの顔と三つのバブルが浮かんだ。
普通に陸地というか宮殿の床が見えている。
「さぁ着きましたよ。みなさんそちらの階段から上がってください」
ミューさんがそう言うと3つのバブルは弾けて消えた。
僕たちは階段まで泳ぎ宮殿の床に上がる。
そのあとミューさんも階段まで泳ぎ、どうするのだろうと見ていると。
二本足!?で階段を上がったのだ。
「ミューさんその足は?」
芹奈がストレートに尋ねる。
「あ、これですね。海底都市には不思議な力があって、ここでは尾鰭を足に変える事が出来るんですよ」
とニッコリ笑って答えた。
ミューさんの姿はもはや普通の人間が水着を着ているだけにしか見えない。
石の廊下を歩いて真っ直ぐ進むとまた門に着いた。
「この門の先が海底都市の内部になります。では行きますよ」
門が開き、かつて見たことも無い風景が目に飛び込んで来る。
どう表現したら良いのか分からないが、まず家が在る。
流石に地上にあるような綺麗な見映えの家では無いが、岩をある程度加工して繋ぎ合わせて造られていた。
次に人数だ。門から出た場所から見渡す範囲だけで外に20人以上はいるだろうか?普通の人間に見えるが全員人魚なのだろう。
僕はどうしても気になったので質問する。
「人魚って男はいるんですか?」
「残念ながら全員女です。だから人魚は男性と交わる事が無いんですよ」
心の中で密かにホッとしていた。
仮に男の人魚が居たとしても、興味は無いし見たくも無かったからである。
最後に光だ。
なぜ深海の奥深くに光があるのか?
「この海底都市を照らしてる光ってどうなってるんです?」
ミューさんが斜め上方向を指差して説明する。
「海底都市の空は超巨大なドーム状のバブルで出来ていて、ドームの中心部にあるコアが年中光を放っているんです」
「な、なるほど…」
人智を超えた内容に理解が追いつかなかったが、「なるほど」などと言ってしまった。
コメント