「海底都市に連れて行く条件として、枝豆を持って来て欲しいんです」
ん!?僕は何か聞き間違えでもしたのか!?
「失礼ですけど、今、枝豆とおっしゃいました?」
「ええ、枝豆と言いましたけど何か問題でも?」
「あ、いえいえ。海底都市に連れてって貰う条件としては如何なものかと思いまして」
「わたしは大真面目です。枝豆は地上でしか採れないし、海底都市では非常に貴重な物なんですよ」
分からなくもないが…海底都市と枝豆では言葉の響きが違うというか何というか。
「でも枝豆が海底都市で何の役に立つんです?」
「枝豆は人魚の特殊な病気の特効薬になるんです」
枝豆の成分が人魚の体内で化学反応でも起こすのだろうか?
好奇心旺盛な僕は人魚と海底都市に益々興味が湧いて来た。
「明日の同じ時間にこの場所で待ってます。枝豆を必ず持って来て下さいね」
人魚はそう言って海の奥深くへと消えて行った。
さてと、二人にどう説明しようか…
「キキ、幽霊じゃなくて安心したわ。でも人魚って本当に存在したのね。今でも信じられないわ」
いや見てたんかーいと心の中で突っ込む。
「わたしも海底都市行ってみたいです!なんとかなりませんかねぇ?」
乙葉さんも一緒に隠れて観てたらしい。
「ど、どうかな〜それは。人魚に訊いてみないと何とも言えないな」
実際のところ明日また人魚に会えるかどうかの保証も無い。
仮に約束通り会えたとして、急に二人を会わせて連れて行ってくれるのだろうか?
「キキがどう思おうと明日は絶対付いて行くから」
芹奈のわがままが始まってしまった。
「芹奈さんが行くならわたしも付いて行きます」
乙葉さんまで…
「じゃあ明日またみんなでここ来てみよう。あとはあの人魚次第ってことで」
もう、どうにでもなれである。
その日はそこで切り上げてマンションに戻り、芹奈も下宿先へと帰って行った。
翌日になり、僕は朝からスーパーに行って、あった枝豆を買い占めた。
会計を済ませて枝豆のあった場所を見ると、店員さんが補充していたのであとの客も困らないだろう。
マンションに引き返すと芹奈と乙葉が準備をして待っていた。
「さあ行くわよキキ!海底都市へ!」
いや行けないかも知れないから、そんなに気負わないで欲しいのだが。
「酸素ボンベも準備済みです!行きましょう!」
乙葉さんはいつこんな物を仕入れたのだろう。
こんな二人が行けなくて気落ちしないよう願うばかりである。
こうしてテレポートボックスに乗り込み、昨日と同じ場所へと転移したのだった。
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