「確かに人魚ですがわたしからも質問があります。なぜあなたはわたしにこんな酷い仕打ちをするのですか?」
ごもっとも、確かに人魚からすれば僕の行いは災難でしかないだろう。
「怒られるかも知れないけど、単なる好奇心からです。すみませんでした!」
どう考えてもこちらが悪い。
「取り敢えず海に浸からせて貰えませんか?このままだと死んでしまいますので」
「すぐにそうします!あの、抱き抱えて運びたいんですけどあなたに触れても大丈夫でしょうか?」
「…お願いします」
僕は人魚に近づきお姫様抱っこをした。
上半身を支える左腕からほんのり温かく人肌と変わりない感触が伝わる。
下半身を支える右腕からは予想通り冷たく、大きな魚にでも触れているような感触が伝わった。
岩場まで運び海面にゆっくりと降ろす。
海に浸かった人魚は安堵の表情を浮かべていた。
このままレアな機会を逃す訳にはいかない。
「人魚さん、少しだけお話し出来ますか?」
「海に浸かっているので幾らでも構いませんよ」
意外な返答が返って来た。
ひょっとして人魚の方も人間と話しがしたかったのかも知れない。
「違ってたらすみません。さっきあっちの方で女の子達が遊んでいるところを除いてたのはあなたですか?」
人魚の表情が曇る。
「…そうですわたしです。楽しそうな人達の声が聞こえたので興味をそそられてつい覗いてしまいました」
「別に攻めてる訳ではないのでそんな顔をしないで下さい。確認したかっただけですから」
これで幽霊では無かったということが確定した。
「人魚さんはどこからやって来たのでしょうか?」
こんな質問答えてくれるだろうか。
「海底都市というところですよ。知らないでしょうし、知って貰っても困りますけど」
「…海底都市」
す、素晴らしいじゃないか!一体どんなところなんだろう!?
僕は海底都市と聞いて心躍らずにはいられなかった。
「そこって連れて行って貰えたりしませんか?」
「しません」
「場所を教えてもらう事は出来ませんか?」
「出来ません」 駄目だ。秒も掛からずに拒否られる。
人魚の表情がまた曇り何かを考えているように見えた。
「話していて分かるのですが、あなたは悪い人では無さそうです」
「ありがとうございます。褒めて貰えて嬉しいです」
「条件付きで良ければ連れて行っても構いませんよ」
え!?何この展開!? 僕は海底都市に行けるのならば、どんな条件でも呑もうと思い始めていた。
「その条件って何ですか?」
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