翌日の朝、ミアとジーナはいつものように顔を突き合わせて朝食をとっていた。
ジーナの表情は重く何かを考え手たようだったが、意を決したのか口を開く。
「ミア、昨日の闘技大会の話しなんだけど…お母さんは賛成する事にしたわ」
「え!?」
ミアがジーナの表情を見て喜んで良いものか迷う。
「ん〜、どうしたのお母さん。昨日はあんなに反対してしていたのに」
「何年か前にあなたが言った言葉を思い出したの。「いつか世界を観てみたい、旅をしてみたい」って」
ミア自身なぜだか分からないが、気付いた時には心の中にずっとそういう願望があり、想いが溢れてジーナに話した事もあった。
「でも、昨日話したのは闘技大会の件だけだよ。闘技大会が終わったら家に帰るつもりだし…」
ジーナが首を横に振る。
「お母さんは、あなたがペタリドから旅立つ良い機会だと思っているわ」
「でも、お母さんを一人になんて出来ないよ…」
「わたしの心配をする必要は無いわ。お隣には頼れるニールの家族も居るし、たまにバロックさんやワッドさんも遊びに来てくれるしね。だから大丈夫よ」
ニールはセトが亡くなってからというもの、償いの意味で動物の肉を持って来たり、何か手伝える事はないかと二人を気遣い度々訪れ、ラナという女性と結婚した時は隣の敷地に家を建て、お隣のニール一家はジーナにとって心強い存在になっていた。
「あなたは特別な子なの。自分でも分かっている筈よ。いつかはペタリドを出て何かを成し遂げなければならない運命にある事を」
「…うん、今はハッキリと分からないけどそんな気がしてる」
ジーナが涙を流しながら笑顔を作って話す。
「ミア、ペタリドから旅立ちなさい。でもいつの日か旅が終わったら、必ずお母さんの元に帰って来てね」
ミアは席を立ち、ジーナの後ろから抱きつき涙を流しながら言うのであった。「お母さんありがとう。絶対、絶対帰って来るからね」
それから3日が経過していよいよ旅立ちの日が訪れた。
ミアが旅支度を済ませ、バックパックを背負い家のドアを開けたところへニールが現れた。
「ミア〜これ持ってけ、嫁さんが作ってくれたラゼムの燻製だ!美味いぞ〜!」
後ろからバロックとワッドもやって来る。
「ニールさん、いつもありがとう。これからも母の事をよろしくお願いします」
「そんなのは当たり前だ。心配るな任せておけ!」
「バロックさんにワッドさんも見送りに来てくれたんだ?ありがとう」
「お前はわしの孫みたいなもんだからな」
「闘技大会頑張れよミア!。もしシャナン様に会えたらバロックは元気ですと伝えてくれ」
ジーナがミアのために購入しておいたバセマラを連れて来る。
バセマラの鞍にはレクルがちょこんと乗っていた。
「レクルはバックパックの上に乗るの」
言われてレクルは移動して、ミアがバセマラに乗る。
「元気でね。ミア」
「うん、お母さんも元気で。じゃあ行って来ます!」
互いに笑顔で言葉を交わす事ができた。
こうしてミアは皆んなに見送られ、アディア城を目指し、慣れ親しんだペタリドの町を旅立ったのだった。
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