家ではジーナが洗濯物を干している最中だった。
肉の売上金を渡そうとミアが駆け寄る。
「お母さんお母さん!これ肉の売上金。20万ギラで売れたよ」
20万ギラはミアの一月分の稼ぎに相当する額だ。
「まあ!?そんなに高く売れたの!?あの肉は特別美味しいものねぇ。良かったわねミア」
「へへ〜ん、このお金はいつもの所に仕舞っておくね」
「気が聞くわねぇ。いつもありがとう」
ミアは闘技大会の件を訊いてみる事にした。
「お母さん、アディア城である闘技大会って知ってる?」
「アディア城の闘技大会?…知らないわねぇ」
「…あのね、来週開かれるみたい何だけど…その闘技大会に出ちゃダメかなぁ?」
ミアは言いづらそうに訊いてみたが、ジーナの表情は曇っていた。
「そんな危なそうな名前の大会ダメに決まってるでしょ」
「だよねぇ…でも出てみたいなぁ。賞金も出るんだけどどうしてもダメかなぁ?」
「ダ〜メ」
ジーナがミアを心配して言っているのは理解しているが、少し期待していた気持ちもありへこんでしまう。
その日に何度か食い下がってみたが、結局ジーナは首を縦に振らなかった。
「ジーナ、ジーナ起きて」
その夜、寝ていたジーナは誰かに呼ばれたような気がして目を覚ます。
2階の寝室から1階に降りたが特に問題ない。
地下室も確かめようとドアを開け階段下を見ると、地下室からほのかに灯りが漏れていた。
階段を降りて恐る恐る覗くと、薄い緑色の発光体が宙にユラユラと浮いている。
ジーナはミアを授かった時の事を思い出し話しかけた。
「あの時の星の守護者様ですか?」
すると発光体から声が聞こえて来る。
「そう、星の守護者です。覚えてくれていましたね。」
「もちろんです。あの時の事を忘れる筈がありません。なぜ突然わたしを呼ばれたのですか?」
「貴方に大切なことを伝えなければならない時期が来たのです」
「ミアの事でしょうか?」
ジーナは内心ではある程度分かっていたのかも知れない。
「そうです。ミアは貴方の子であると同時に星の守護者である世界樹の子でもあるのです」
「世界樹の子…」
「あの子を授けた時にも伝えましたが、あの子には星の未来がかかっています。いよいよミアの旅立ちの時が来たのですよ」
「それはペタリドから…わたしの元からあの子が居なくなってしまうという事でしょうか?」
「辛いでしょうけれどそれが宿命なのです。あの子をこの町に留めてはなりません」
「…………..」
ジーナは言葉が出ない。
「そう悲観する必要はありません。数年後に事が済めば、あの子は貴方の元に帰って来ることでしょう」
「…その言葉を信じてもよろしいのですね?」
「大丈夫です。安心なさい。では、頼みましたよジーナ」
その言葉を最後に発光体は「フッ」と消え去った。
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