「キキ兄、そこに在るのって…もしかして完成したの?」
中学までは実家で研究していたので、小桜には研究内容をちょっとだけ話していた。
「ふっふっふっ、その通り!遂に完成したのだ妹よ!思いっきりリスペクトしてくれていいぞ!」
「リスペクトするーっ!キキ兄はやっぱり大天才だーっ!」
小桜が勢い良く抱きついて来た。
麗しき兄弟愛のあるべき姿。
何つって。
「ところでお父さんとお母さんは在宅か?」
「ううん、わたしは夏休みだから家に居たけど、今日は二人とも仕事で出掛けてる」
「そっか…小桜もこの転移装置テレポートボックスを体験してみないか?」
「絶対体験するーっ!」
妹を喜ばせたいという気持ちと、実験の証明になるという考えからマンションに連れて行く事にした。
両親が家に帰る前に連れて帰れば問題ないだろう。
「じゃあこの中に入ってくれ小桜」
「OK!」
ドアを閉めて準備を始める。
マシンに異常が無いかAIの「アイネ」に呼びかける。
「アイネ、マシンに異常は無いか?」
コンピュータのモニター画面に簡単なグラフィックで作られたアイネの顔が映し出される。
「イジョウアリマセン、キキ」
「ありがとうアイネ」
あとは赤いスタートボタンの隣にある青いリターンボタンを押すだけでマンションに転移される筈だ。
「ん、待てよ」
転移時に予想より激しくマシンが揺れたことを思い出す。
妹に何かあれば大変だ。
「小桜、そこの椅子に座ってシートベルトをしてくれ。結構揺れるから気を付けるんだぞ」
「ラジャー!」
素直に椅子に座りシートベルトをしてくれた。
「よーし、リターン!」
言う必要は全く無かったが気持ちが昂り敢えて言葉を発してボタンを押した。
マンションから転移した時と同様にテレポートボックスが揺れて高音が耳を劈く。
まだまだ改良の余地がありそうだ。
「ブン!」
また意識が途切れる。
「…キ、キキ!大丈夫?」
外から芹奈の声が聞こえる。
僕は目覚めて小桜の方を見たがやはり気を失っていた。
「小桜!マンションに着いたぞ!」
身体を揺すると妹はすぐに目覚めた。
ドアの外に居る芹奈に伝える。
「芹奈!大丈夫だ!いま出るからマシンから離れて!」
妹について来るよう促しドアを開けてテレポートボックスの外に出た。
僕は腕時計を見て時間を確認する。
実験時間はトータルで15分といったところだ。
「おっと、まずは紹介しておく。実家から連れて来た妹の小桜だ」
芹奈と乙葉の二人は驚いた様子だったけれど、小桜と握手しながら挨拶を交わした。
乙葉の持つカメラに向かって僕は言う。
「実験は完全に成功した!」
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