翌日、ミアは家で消費される分を除き、大量に余ったウガルルムの肉を酒場のバッガロに売りに来ていた。
「マスター!極上の肉を持って来たよ。試食して貰えるように焼いたのがあるから食べてみて」
マスターのソルドは20年以上バッガロで酒場を経営している。
こうやって狩人達が持ってくる肉や野菜を買い取り、調理して酒場に来るお客さんに提供していた。
「どれどれ、ミアお嬢様の褒めちぎる肉であれば間違いないはず…」
差し出された試食用の肉を口にして味見する。
「な、なんじゃこりゃー!この食感と味はかつて経験した事がないわい!」
「でしょでしょ〜」
ミアはソルドの反応にご満悦だ。
「10万ギラで全部買うぞ!」
この一言でニコニコしていたミアの眼が鋭くなる。
「マスター!この極上の肉がこの量で10万ギラはないんじゃない?こっちは他の酒場に持って行ってもいいんだけどな〜」
「う、じゃあいくらなら売ってくれるんだ?」
「20万ギラってとこかな」
「倍かよ!?くぅだが仕方ねぇ!それで手を打ってやる」
「毎度あり〜」
ミアは商売の駆け引きもこなすようになっていた。
酒場を出て家に向かって歩いていると、町の掲示板に人だかりがあるのに気付く。
興味が湧いて近付いても人が多すぎて掲示板が見えない。
「お、ミアも闘技大会に出場場するのか?」
いつの間にか側に寄って来ていたバロックに話し掛けたれた。
「え!?闘技大会ってなに?」
「なんだ知らずに掲示板を見に来たのか。まあ良い、一週間後にアディア城で剣技を競う大会が開かれるんだよ」
「それってわたしも出場出来るのかな?」
「剣技」と「競う」というワードにミアは惹きつけられたようである。
「年齢、性別、職業は不問だ。とはいえ剣聖七葉は参加しないがな」
「ええ〜それは残念、シャナンのお兄ちゃんの闘うところ観たかったなぁ」
「今やアディア王国最強の剣聖をお兄ちゃん呼ばわりするのはミアくらいのものだ」
バロックがやれやれといった表情をしている。
魔物の討伐でペタリドに来た時のシャナンは20歳と若かったが、当時の強さは語り継がれ町民の誰もが知るところだ。
あれからシャナンは多くの修羅場を潜り抜け、武勲を積み重ねて剣聖七葉の統括長となっていたのである。
「ねぇねぇ大会で優勝したら何か貰えるの?」
「優勝者には賞金1億ギラと何かしらの特権が与えられるみたいだぞ」
「優勝するだけで1億かぁ凄いな〜」
「簡単に優勝と言うが参加者は王国全土から集まって来る。優勝するのは容易じゃないぞ」
「そうなんだぁ…どちらにしてもお母さんに相談してからかな。ありがとうバロックさん。じゃあね〜」
そう言ってミアは家に帰ったのだった。
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