ミアは接近戦で片をつけようとウガルルムに向けて突っ込む。
目前まで近寄ると、小さい頃に剣聖シャナンから贈られた銀の剣を鞘から抜き、眼に矢が刺さって怯んでいるウガルルムの胴体から首を切り離した。
「流石はミア!今日も絶好調だね〜」
レクルが見事な手際を見て褒める。
「ん〜レクル、この魔物の肉って食べられるかな?」
魔物の出現により自然界に棲む動物の数は減って来ていた。
一時は食料不足に陥ったペタリドの人々は、食糧不足を解消する為に倒した魔物の中で食べられる種を研究した結果、今では5種の魔物を動物の代わりに食していた。
レクルが少し考え提案する。
「ここで焼いてみる?もし食べられそうだったらコイツを狩の収穫として持ち帰れば良いんじゃないかな?」
「そうね〜、試してみる価値はありそう。レクルは焚き木を探して持ってきくれる?」
そい言うとミアは短剣を取り出してウガルルムの解体を始めた。
身体の小さいレクルは何度も脚を運んで、解体している横に焚き木を集める。
ミアが集まった焚き木に手をかざすように向けて言葉を発した。
「ファイア!」
「ボッ」と音がして焚き木が燃え出す。
今のところ使える魔法はこれだけなのだが、幼少期に誰に教わるでも無くこの魔法を覚えたのだった。
ジーナが最初に魔法を見た時はもちろん驚き、「人前では絶対に使っては駄目よ」と念押しされたものである。
暫くして肉が程よく焼け上がった。
「レクル〜毒見して〜」
ミアが冗談混じりに言う。
「いいよ。毒は無さそうだし、仮にあったとしてもミアより毒耐性あるしね」
見かけは普通に美味しそうな肉にレクルが噛み付き、モグモグと噛んでいると眼が輝き出した。
「うっま〜、美味いよミア食べてみて!」
「そ、そう?じゃあいただきます!」
ミアは勢いよくかぶりつき食べ始める。
「うっまーーーっ!本当に美味しい!こんな肉食べた事ない!」
一人と一匹は無我夢中で相当な量を食べたのだった。
「よし!早く持ち帰ってお母さんに食べさせてあげよう!」
「そうだね。急がないと鮮度も落ちちゃうし」
綺麗に剥ぎ取ったウガルルムの皮に残りの肉をのせてくるっと丸めて背負う。
大きかったウガルルムの肉は相当量を消化したとはいえ、残りの重量はミアの体重の5倍はある筈である。
それを軽がると背負う力は計り知れない。
山を降りて昼過ぎには家に帰り着いた。
「ただいま〜お母さん」
「あら、お帰り。今日は早かったわね」
「運良く美味しい肉が手に入ったんだ〜」
「…きっとあなたの事だから新種の魔物でも狩ったのかしら?」
「ゲッ正解。良く分かったねお母さん」
「何年あなたのお母さんをやってると思ってるの?よし!今夜は美味しい肉料理を作ってあげるわね」
その日の夕食でウガルルムの肉の美味しさにジーナも目を輝かせて驚いたのだった。
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