シャナン達がアディア本城に帰還する日を迎えた。
予定通り魔物の掃討は終わり、隊員達は帰り支度を始めている。
剣聖シャナンは隊員達とは別行動で、セトの墓参りを済ませたあと早朝からジーナの家を訪ねていた。
家のドアをノックすると、ジーナとミアが一緒に出て来る。
「今日は僕達の帰還する日で、セトさんにお別れの挨拶をして来たところなんです」
「ありがとうございます。きっとあの人も喜んでると思います」
ジーナの表情を見ると、明るいとは言い難く少しやつれていたが、少しだけ悲しみから抜け出しつつある様だった。
「あ、そうそう。こちらに寄ったのはミアちゃんに渡したい物があって伺ったんですよ」
「そうなんですね。ミア、シャナン様からあなたにプレゼントがあるみたいよ」
ミアが自分の名前を呼ばれて興味を示す。
「プレゼント!何かな何かな〜」
「えっと、今のミアちゃんに喜んで貰えるか分からないんだけど…」
シャナンは腰に付けていた銀の剣を鞘ごと外し、両手で持ってミアに差し出す。
「この剣はね。タリガ山とエルガ山にいた魔物をいっぱいいーっぱい斬った剣なんだ。だからこれをミアちゃんの御守りとして持ってて欲しいんだよ」
ミアは剣士の使用する剣など今まで見た事は無かった。
だが意外にも喜んでいる。
「お兄ちゃんがこの剣を使ってるところをちょっと見てみたいな〜」
「ん!?ちょっと待っててね」
シャナンは少し困った様子だったが、15歳の頃にひたすら練習をして身体が覚えている演武を披露して見せた。
それは剣士を志す者が見れば、かなりの手本になるほど美しく正確な演武だった。
「キレイ…」
ミアは初めて見る演武に感動している。
演武が終わり、剣を鞘に納めてミアにもう一度差し出した。
シャナンはミアには重いだろうと思いゆっくり差し出したのだが、ミアはなんと片手で受け取り軽々と持ち上たのである。
シャナンはもちろん横で見ていたジーナも驚く。
「す、凄いなミアちゃん」
「ありがとうお兄ちゃん!大切にするね!」
「ジーナさん、ミアちゃんまたいつの日か会える事を楽しみにしてます」
ジーナの家をあとにしたシャナンは隊員達の元へ戻った。
マイセン町長やワッド、ニールなど町の人々が見送るために集まっている。
シャナンが今後の魔物対策について説明した。
「マイセン町長、ここに居るバロックが本人の希望もありペタリドに残ります。彼は経験も豊富で優秀な兵士ですので、今後は彼から学び魔物対策の部隊を育成構築して下さい」
「分かりました。今後は町を挙げて魔物対策に取り組みましょう」
こうしてシャナン達はローグに乗って、ペタリドの町民に見送られながら、アディア本城へ帰還するのだった。
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