「おはようキキ君、やっと起きてくれたわね」
赤城芹奈は笑顔だが逆に怖い。
「や、やあ赤城さん」
「そんな他人行儀な呼び方は辞めてこれからは芹奈と呼んでくれるかしら。小、中、高と同じ学校なんだから友達じゃない?わたしもこれからキキと呼ばせてもらうわ」
そんな友達の定義など存在しない。
学校が一緒だからと言ってもほとんど接点というか交友というものも無かった筈だ…
物凄い眼力でこちらを見てらっしゃる。
「分かったよ。あか…芹奈」
こんなに迫力のある人だったっけ!?
今まで単に僕が興味を示さなかっただけか…
「ガラガラガラ」
恐らく担任の教師であろう男性が教室に入って来た。
「はい!みんな席に着いて下さーい」
生徒達が一斉に動いて席に着く。
「まずは先生の自己紹介から始めまーす」
と言って黒板に縦書きで氏名を書き出した。
「先生の名前は、湯川英一郎(ゆかわえいいちろう)と言いまーす。今日から1年間このクラスの担任だからよろしくー」
喋り方が独特で起伏を余り感じない先生だ。髪型は説明が難しい、強いて言うなら天パでヒョロ長の体型で白衣を着ている。
生徒の出席を取り終え湯川先生が話す。
「えー、このクラスは他のクラスの生徒達よりも優れた成績で合格した生徒達で構成された特別クラスとなってまーす」
ふーんそうなんだ。
他の生徒は知らないけれど、僕は先生の話しに興味が湧かなかった。
湯川先生が僕を指差して言う。
「因みにトップで合格したのは、そこの興味無さそうな顔で聞いている柱間麒喜君でーす」
オイオイ、湯川先生。
当然の事ながら周りの生徒達から注目を集めてしまった。
仕方がない、これで面倒な自己紹介の手間が省けたと良い風に考えておこう。
その後は湯川先生が学校の説明や心構えなどを話して帰りの時刻となった。
帰ろうと席を立つ僕のところへ芹奈がやって来る。
「ねぇねぇ、キキはどこに住んでるの?因みにわたしは親戚の家に下宿させて貰ってるの」
ここで芹奈にウソを言う事は簡単だったが、バレた時が厄介そうだったので正直に話す。
「マンションに保護者と住んでるよ。じゃあもう帰るわバイバイ」
手早く済ませて帰ろうと試みたけれど…
「見てみたいな〜そのマンション」
ニコニコしながらグイグイ来るな。赤城芹奈。
もはやあれやこれやと考えて抵抗するのは時間が勿体ない。
僕はなぜか纏わりついてくるこの女子と仲良くする決心をした。
まあ友達が一人くらいいた方が高校生活も潤滑になるだろう。
「分かった。じゃあ一緒に帰ろうぜ」
「物分かりが早くて嬉しいわぁ」
やれやれ。
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