世界樹とハネモノ少女  「力尽きる」

世界樹とハネモノ少女

 セトとニールは山道の横端にある岩に座って休憩を取る。

「その足で良くここまで頑張ったなニール」

「いえ、結局みんなの足手まといになってしまいました…」

 ニールは迷惑を掛けてしまったセトに申し訳なさそうにしている。

「今日みたいな経験は狩人を長くやってるオレも初めてだ。新人狩人なのにお前は良くやったよ」

「そう言って貰えると救われます。ありがとうセトさん」

 狩人という職業は常に危険と隣り合わせである。

 セトはその厳しさを知ってるが故に優しく励ますのだった。

 10分ほど休憩して回復したのかニールが徐ろに立ち上がった。

「セトさん、もう大丈夫そうです!そろそろ行きましょう」

「お、そうか。じゃあ行こうか。っ!?」

 立ち上がったセトがニールの背後の木に潜んでいるイヴァイに気付く。

 直後、そのイヴァイがニール目掛けて突進する。

「ニール!横に飛べ!」

「え!?」

 急な指示に身体が反応しないニール。

 イヴァイはニールに飛びかかっていた。

「くっ!間に合わん!」

「おわっ!?」

 セトは左腕で強引にニールを横にどける。

「ガァルルル!」

 ニールのいた空間を通り抜けセトの首に鋭い牙で噛みつく。

「ゴォズッ!」

 セトは右手に持っていた斧でイヴァイの脳天をかち割った。

 イヴァイが絶命し倒れ、セトも立っていられず膝を地に落とす。

 セトはぼやけつつある目で、イヴァイの右目に折れた矢が刺さっているのを見た。

 初めて魔物と対峙した時の場面が頭に浮かぶ。

「くっ、あの時の奴だったか…まぁ良い、仕留められた…」

 後ろに倒れようとするセトをニールが右手で支え、明らかに致命的な首の傷を左手で塞いだ。

 出血が止まらない。

 ニールが大泣きしながら話しかける。

「貴方はこんなところで死んで良い人じゃない!お願いだから死なないで!」

 意識の朦朧とするセトがニールに話す。

「い、いいか、ニール。こ、これは、お、まえの、せ、いじゃ、ない…ジー、ナと、ミア、に、すま、な、い、と………….」

 心臓の鼓動が止まり、セトは目を瞑ったまま力尽きた。

「セ、セトさん…うわぁぁああああああああああ!」

 ニールは耐えきれずあらん限りに叫んだ。

 暫く泣き続けたニールは、セトをロープで自分の身体に縛り付け、限界近いその足で麓へ向かい歩き出した。

「セトさんはオレの足が折れたとしても連れて帰ります」

 屍となったセトに意思を伝える。

 足を引きずるように歩いていると、目の前にバロックとワッドが走って向かって来るのが見えた。 ニールは二人の姿を見て安心したのか、歩みを止めて地に両手両膝をつけたのだった。

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