ガーゴイルの群れはまだ一行に気付いていなかった。
「セトさん、ニールさん。中央に急いで集結するよう他のパーティに伝えて下さい」
「分かりました!」
まだ気付かれてないのであれば奇襲をかける事が出来るかも知れない。
シャナンはそう考えて指示を出したのだ。
セトは右側、ニールは左側に駆けて行く。
左側のパーティのいる位置まで着いたセトが伝える。
「ガーゴイルの群れを発見した。みんな中央に集まってくれ」
そう伝えたあと、そのまま端のパーティの所まで駆けて同じように伝えた。
中央に全員が集まったのを確認してシャナンが指示を出す。
「あちらにガーゴイルの群れが在ります。隊員全員が横一列に並び、その後ろに狩人の皆さんが同じように並んでください」
全員が機敏に動いて横陣の形が整いシャナンがまた指示を出す。
「今からガーゴイルの群れが在る位置まで進行して奇襲をかけます。可能な限り近付き、弓矢でガーゴイルを狙える距離まで近付いたらいつでも矢を放てる準備をお願いします」
こうして一行は横陣を崩さぬよう歩幅を合わせ進んで行った。
暫く進行するとガーゴイルを目で確認出来る位置まで辿り着く。
ガーゴイルの最も数の多い場所を注視すると、地面に10頭ほどのラゼムが倒れていて、それを食べようと群がっている事が分かった。
「これだけの群れなのにボスらしき奴の姿が見当たりませんね」
シャナンは群れの様子を見て釈然とせず首を傾げる。
飛んでいる者も合わせ全部で40匹くらいだろうか、確かにこれだけの群れに統率者のボスが居ないのは不思議だった。
不安を残しながらも、音を立てて気付かれないように慎重に近付く。
既に弓を構えて狙いを定めつつあった狩人達にシャナンが伝える。
「ラゼムに群がるガーゴイルには我々アディア部隊が突っ込みます。狩人の皆さんは木に留まって動かない奴らを狙って下さい」
云われた狩人達は各々狙いを定め弓を引き絞る。
「矢を放てーーーっ!突っ込みますよ!」
狩人達の放った矢は7匹に命中した。
30匹ほどの群れに最初に到達したのはシャナンだった。
到達して10秒も経たぬ内に5匹の首を刎ねる。
少し遅れて他の隊員が到達し、奇襲を受けて混乱しているガーゴイルを討ち倒して行った。
中には空中へ飛び立とうする魔物もいたが、狩人の矢に射抜かれ倒れていく。
地上戦で残っている魔物はあと数匹となり、シャナンが斬って捨てようと飛びかかろうとした刹那。
セトが叫んだ。
「上だーーーっ!シャナン様ーーーっ!」
長剣を持ったボスが、空中の真上からシャナン目掛けて猛スピードで向かっていたのだった。
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