学校を出て両親の車で家に帰り着く。
購入したマンションは3月から住めるようになっており、早速引越しの準備に取り掛かった。
マンションに持って行く物、家に残す物、捨てる物を振り分ける。
持って行く物の殆どは研究やビジネスに使用する本や器具、関連する書類などだ。
誕プレで両親から貰ったドラえもんのコミック全巻は僕的にとって大切な物なので持って行く事にする。
引越しの準備に暇の無い僕に小さい女の子が話しかけて来た。
「ねえねえ、お母さんから聞いたんだけど、キキ兄はどこか遠い所に行っちゃうの?」
駆け足で僕の過去を振り返っているので紹介が遅れてしまったけれど、可愛い可愛い僕の妹の柱間小桜(はしらまこはる)である。
この時妹は小学6年生で12歳。
色素が少ないのか髪は薄茶色。
目は大きくクリンとしていた。
実は僕と同等かそれ以上にIQが高い天才少女である。
申し訳ないのけれど、両親のIQも高い方だが天才と称される程のレベルではない。
そんな両親から天才が二人も誕生した確率を計算すれば、きっと天文学的数字になるだろう。
話が少し逸れてしまったが、僕は妹に高校の話はこの時までしていなかった。
妹には両親から話ているものと思い込んでいたのである。
「そうだよ小桜。キキ兄は高校で勉強するために明日には遠くへ引っ越すんだ」
害した気分を隠そうともせず不機嫌な顔になる我が妹。
「じゃあ分からない問題がある時はこれから誰に訊いたらいいの?」
妹に分からない学問的な問題などは僕にしても難題なのだが、一緒に考えられるのは僕しかいない。
学校の友達を始め、先生や両親に質問してもチンプンカンプンになって終わってしまうのだ。
「おやおや、小桜にしては珍しいなぁ。それはネットを使えば片付いてしまう話じゃないか?」
恐らく小桜は分かっていて言ったのだ。
引越しするのを今まで黙っていた僕に対しての抵抗だろう。
「キキ兄のカボチャ頭!」
カバチャ頭!?妹は訳の分からない捨て台詞を残して「タタッ」と家の外に飛び出して行ったのだった。
追いかけて一言謝るべきだったかな…
明日の朝には引越し業者の方が来る段取りになっていた。
ついでに僕もトラックに乗っけてもらう為、時間的な余裕が無く、そのまま引越しの準備を続行してしまったのである。
夢中で準備をして大方片付いた頃に外を見ると、陽は沈み辺りは薄暗くなっていた。
母が僕の部屋に来て訊く。
「キキ、小桜を見なかった?いつもなら部屋で勉強してる頃なんだけど見当たらないのよ」
「僕が最後に見たのは3時間くらい前だけど、庭で数学の勉強でもしてるんじゃないかな」「庭はもう見たわ。でもやっぱりいないのよねぇ」
母が本気で心配しているようである。
「分かった。僕がちょっと家の周囲を見て来るよ」
そう言って妹を探しに外に出たのだった。
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