シャナンは突き刺した剣を引き抜き、その頭を踏み台にしてまたジャンプする。
そして着地する寸前に群れの最後尾を駆けるイヴァイの首を横一閃で断ち切った。
非常事態に勘づいた群れの半数近くが根源であるシャナンに標的を換えて襲いかかる。
数で押して来る敵に対してシャナンは全く怯まない、逆に超人的きな動きで1匹また1匹と斬り伏せていく。
その姿はさながら鬼神のようであった。
12匹の敵をバロック達が引き受ける形となった。
先ほどの作戦と体制は同じだが、狩人達は目の前で守りを固める隊員達の間を縫って既に矢を放っていく。
矢は1本も外れるずに4匹の動きを止める事に成功した。
残す8匹が牙を剥き飛び掛かって来る。
ここでバロック達が予想していなかった事が起きた。
バロックのパーティ後方右手側から数本の矢が飛んで来て4匹のイヴァイに命中し動きを止めたのである。
ワッドが後ろを振り返るとガーゴイルと戦っている筈の11人の姿があり、イヴァイに向けて走りながら矢を放っていたのだ。
「ガツーーーン!」
残った4匹の攻撃をバロックの隊員達が盾で受けて狩人達が斧で頭部をかち割る。
転がる魔物の絶命を確認してバロックが前方を見ると、シャナンに襲い掛かった魔物達の全部が斬り伏せられ地面に倒れていた。
たった一人でボスのイヴァイと十数等を倒したのである。
全パーティは手負の魔物がよろけているところへ、次々と矢を放ち全滅に追い込んだのだった。
シャナンが辺りを見渡して危険が無い事を確かめ口を開く。
「もう大丈夫のようです。皆さん勝ち鬨をあげましょう!」
「おおおおおおおーーーっ!」
全員が一斉に叫んだ。
最後に魔物の数を当たると、ガーゴイル8匹とイヴァイはボスを含めて28匹、合計で36匹を倒したのである。
ガーゴイルの使う炎系魔法で火傷を負った者がいたが、他の者にはケガもなく死人も出なかった。 初戦は完全勝利であると言えよう。
ワッドがセトを見つけ話し掛ける。
「ようセト、ガーゴイルはどんな魔物だった?」
「翼があって飛行する奴らだ。魔法は生まれて初めて見たから驚いたよ」
「魔法か…そんな厄介そうな奴らをよくまあ短時間で倒して来れたな?」
「全部で8匹いたガーゴイルの内5匹はシャナン様が倒した。あのお方は別格だ。剣聖七葉に選ばれるだけの事はある」
「ああ、人間技とは思えないくらいだ。イヴァイのボスも一瞬で倒してしまったしなぁ」
アディア王国の隊員達はその強さを当然知っていたが、狩人達は初めてシャナンの戦い振りを見た。
そして狩人達は心から敬服するのであった。
戦闘で疲労した身体を癒やすため全員が揃って20分ほどの休憩を取る。
休憩の最中、シャナンが全員に向かって説明した。
「恐らくこの山のイヴァイに関してはこれで全部でしょう。ですが、まだガーゴイルのボスを見ていません。あと1時間ほど歩を進めて昼食を摂り、その後は山のもっと奥を調べましょう」
コメント