バロックが指揮するパーティは、5匹のイヴァイを見事に片付けた。
魔物との初戦を無傷で勝利した狩人の4人は、自己の恐怖心との闘いにも打ち勝って動けた事もあり喜びも一入である。
「紙一重とはいえ俺達もやれば出来るものだなぁアル」
「そうですねワッドさん。身体が反応してくれた助かりました」
二人はテンションが上がりハイタッチした。
バロックが次の行動を指示する。
「喜ぶのはこれくらいにしてシャナン様のパーティの加勢に行くぞ!」
「おお!」
他の者が応える中、ワッドが固まり何かに気づき遠くを見ている。
ついさっきまでの喜びの表情は消え、徐々に顔が険しくなった。
気になったバロックが声を掛ける。
「どうしたワッド。何か見えるのか?」
ペタリドの狩人は一日の半分を山で過ごす。だからという訳では無いが他の人々よりも視力が優れているのだ。
「あれが見えるかバロック?」
ワッドが見ている方向を指差した。
「何かが居るのは何となくわかるが…デイル、望遠鏡を貸してくれ」
バロックが隊員のデイルから望遠鏡を借りて同じ地点を見る。
「これは…不味いぞ。イヴァイが最低でも20匹、その先頭に一際でかいやつが居る。統率者か…」
「お前にも見えたか。あいつらこっちに向かってるようだぞ。バロックどうする?」
一時考えたバロックが指示を出す。
「あの数はこのパーティだけではどうにもならん。やはりここはシャナン様と合流する事にする!」
一斉に全員が走り出したが果たして間に合うだろうか。
シャナン達がガーゴイルと戦闘をしている場所までほぼ1kmあるのだ。
半分くらい進んだところで少し息の上がったワッドが後ろを振り向く。
「ハァハァ、あいつらもうあんな所まで来てやがる」
「ワッド、もう後ろを振り向くな前だけ見ておけ」
追いつかれたら終わる。
確実な死がすぐそこまで迫っている。
8人は生き残りを掛けて必死で走っていた。
そんな状況の最中アルが気付く。
「あ、あれはシャナン様…」
たった一人でこちら側に走って来るシャナンの姿であった。
シャナンはバロック達の目の前に到達してもスピードを緩めない。
すれ違う形となった時にシャナンが叫ぶ。
「反転して僕の援護をお願いします!」
8人が急停止して反転すると、先ほどバロックが確認した一際大きいイヴァイに真っ直ぐ突っ込んで行くシャナンの姿があった。
「うおおおおおーーーーっ!!!」
走る勢いそのままにシャナンが叫び、常人の3倍以上高くジャンプして銀の剣を抜く。
イヴァイの勢いも緩まない。
「ズン!」
シャナンは、統率者であろう大型イヴァイの眉間に銀の剣を深々と突き刺した。
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