覚醒屋の源九郎     94~第一部最終話

覚醒屋の源九郎

決着

「やべえ!スピードが付きすぎて止まれねーーーっ!」

 「キラーン!」勢いの止まらない悟空はそのまま進行方向の山の方まで飛んで行ってしまった。

「ヴァガガガオオオーーーッ!!!」

 ヴァルカンが断末魔の叫び声を上げ前のめりにゆっくり倒れ込む。

「ズドォーーーーーーーーン!」

 その巨体が地面触れた瞬間、爆音と爆風が発生して、焼け野原となった城下町の残り火が吹き飛ばされ消滅した。

 全ての力を使い尽くして気絶してしまっていた太公望は、上空にふわふわと浮く觔斗雲の上で横に倒れて身動き一つしない。

 暫くしてジオンとミリシャが遠く離れた避難場所から飛んで来て、太公望の安否を確かめる。「やったな太公望!おい、生きているか?」

 呼びかけるが全く反応がない。

 心配したミリシャが太公望の耳元で呼び掛けようとした時…「zzz…ZZZ…zzz…ZZZ…」

 イビキをかいて寝ていただけであった。

「あ〜もう、心配損だ。でも生きててくれて良かったよ」

 ミリシャは太公望をすっかり気に入ってしまったようである。

「ミリシャ、こいつを雲ごと城まで運ぶぞ」

「あいよ」

 こうして太公望は無事に城まで運ばれ、ダークエルフの苦手ではあるが少しは効果のある回復魔法で応急処置を受けた。

 アザーム国王ダリクは、太公望と悟空がヴァルカンと戦っている最中、ジオンらに救出され健在であったが酷く落胆していた。

 王国の国民ほぼ全員が城に集まっていたのだが、残念ながら全体の人数はヴァルカン襲撃前の半分以下になってしまっていたのである。「まさかこんな日が来ようとは…」

 ダリクは城上層の外に出て立ち竦み、苦痛の表情で焼け野原となった城下町を見ていた。

「100年前あの猿が暴れた時でさえ、これ程の損害を被る事は無かったですからな…」

 王の隣に居たカルンも無念さを隠しきれない。

 太公望が落ち着いた状態にあるのを見届けたジオンとミリシャが、悲観している二人の側へ駆け寄り報告する。

「ダリク様、太公望は目こそ覚ましませんが、安静にしていれば大丈夫かと思われます」

「そうか、それは朗報だ。今回はあの二人に助けられたな…もし我々だけで戦っていれば、生存者はこの場に一人も残っていなかったであろう」

 ダリクは本心から太公望と悟空に感謝していた。

 カルンが王の意を汲み取り話す。

「そうですな。あの二人に感謝し、これだけでも生き残った事を喜びましょう」

 ジオンとミリシャは少し笑顔を見せ頷く。

 アザーム王国の人々が悲しみや少しの希望で感傷に浸っていると…「あ、猿が帰って来た」

 ミリシャが誰よりも早く気付く。

 山に突き刺さってようやく止まった悟空が、觔斗雲に乗って猛スピードでアザーム城に向かって来る姿が見えたのだった。

第一部最終話

 悟空は城に近付き降りて来るかと思いきや、城の上空でピタッと止まり下の様子を見ている。

「ジオンよ、猿に太公望の無事を伝えて、暫くそこで待って居る様に云ってくれるか?」

「分かりました。では」

 ジオンが悟空の元へ飛ぶ。

 悟空が降りて来ない理由が明確に分かっていたダリクはジオンに指示したあと、国民全体に向かって説明を始めた。

「皆の者良く聴いてくれ。此度は我々のアザーム王国が信じ難い大災厄に見舞われてしまった。多くの犠牲者が出て城下町も焼け野原となった」

 人々は精神的にも体力的にもきつかったにも関わらず、国王の話を集中して聴いている。

「だが幸いにも半数の国民が残り、城も辛うじて全壊せず残っている。これだけ残る事が出来たのは、今上空に留まっている孫悟空と城で休んでいる太公望の力があってこそのものだ。100年前の事件を忘れた訳ではないが、今日の孫悟空の行動に感謝し、少しでも友好的関係にしようと思うのだがどうだろうか?」

 ダリクの言葉を聴き人々が騒めく。確かに今回は悟空にも助けられたのは間違いない。

 しかし、100年前の事を水に流して友好的にするという選択は人々にとっても難しいであろう。

 騒めきが続く中、上空から悟空とジオンが国王の側まで降りて来た。

「ダリク。下の奴らに俺から少し話をさせて貰えないか?」

 悟空の提案にダリクが眉間にシワを寄せる。

「またとんでもない事を言い出すんじゃあるまいな?」

「心配するのは御もっともだが、流石にオレもこの場で下手な事は言わん」

「…人々の気持ちを逆撫でする様な話で無ければ…話して良いが」

 どうせ言い出したら聞かないだろうという思いもあり、渋々ながら許可を出した。

 国民の方を向き、悟空が口を開く。

「お前ら、信じられないかも知れないが、オレはこの惨状を見て100年前の事を今、猛烈に反省している。事情が何だったにせよ、あの時は本当に申し訳無かった!」

 その場の全員が信じられない光景を目の当たりにする。

 あの傍若無人の孫悟空が土下座をしているのだった。文化が違いその姿がどの様な意味を含んでいるのかは計りかねていたが、本人にとって最大限の誠意ある行動であるのは伝わったかも知れなかった。

 人々の中から一つの声が聞こえた。

「お前は今日の英雄だ!どうか頭を上げてくれ!」

 それからは堰を切った様に悟空を称える言葉が人々の中から次から次に出て来た。

 ダリクが悟空の肩に手を当て言葉を掛ける。

「猿よ、許されたな」
 太公望は三日三晩寝込み続けようやく目を覚ました。

「ふぁ〜よく寝たわい」

 起きた太公望は用意された料理を腹一杯食べ、すっかり回復して四大精霊の国でここから一番近いのはサラマンド王国である事を聞き出し、早速出発の準備をする。

 ダリク、カルン、ジオン、ミリシャの面々が見送るために集まっていた。

「寝ている間は世話になったのう。急ぎの用があって復興の手伝いは出来んがしっかりやるのだぞ。それと人間界へは絶対に行ってはならぬ心せよ」

 ダリクが代表して返事を返す。

「約束は守る。それにそれどころでは無くなったから安心しろ」

「じゃあ行こうぜ太公望」

「うむ、では達者でのう」

 二人は觔斗雲に乗ってサラマンド王国の方向へ飛び立ち、あっという間に見えなくなった。
 人間界の源九郎達と精霊妖精界の太公望と悟空の物語は、まだ始まったばかりであった。


 覚醒屋の源九郎 第一部完

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