日もペタリドの町と近隣の山は快晴に見舞われた。
セトは掃討作戦に参加する準備を済ませ、家を出発するところである。
「ミア、お母さんの言う事をちゃんと聞くんだぞ」
「お母さんの言う事はいつもちゃんと聞いてるもん!ねぇお母さん」
少しだけ怒ったように返すミア。
「そうねぇ、ミアは良い子だもんねぇ」
ジーナは微笑みながらミアの頭を撫でる。
ミアは撫でられて嬉しそうにしていた。
「ハッハッハッ、それは余計な事を言ってしまったな。じゃあ、そろそろ行くよ」
セトはミアの頬にそっと触れておでこにキスをする。
ミアはほっぺを赤くして照れた。
「あなた、本当に危険を感じたらとにかく迷わず逃げるのよ!」
「わかってるよ、ジーナ」
セトはジーナとミアに背を向けて歩き出す。
ジーナが心配そうな顔で、ミアは「頑張ってお父さ〜ん」と手を振ってセトを見送った。
ダリガ山の麓、集合場所まで辿り着いた時には既にアディア王国の部隊は全員が集まっていた。
結局、最後に来たのはペタリドで最も背の高いニールである。
ニールは別に集合時間に遅れた訳でも無かったのだが、「本当にごめんなさい!」と言いながら2mある高い背を丸くしてやって来た。
人数を再確認してシャナンが話し出す。
「全員が揃ったようですね!」
隊員達がシャナンの前に整列する。
「いよいよ魔物と直接対決する時が来ました。魔物と接触した場合は集中して戦って下さい。そしてくれぐれも、自分と仲間の命を大切に守っていただきたい!」
聴いていた全員の士気が上がる。
「今からパーティ編成をして頂きます。指名して行きますので、名前を呼ばれた方は私の右手方向から並んでください」
こうして四人パーティが5組編成された。
セトはニールと一緒になり、部隊の一人はドーガ、もう一人は何とシャナンであった。
昨夜の酒場での説明通り、シャナンのパーティを中心に右手方向に200mずつの距離を取って2組、左手方向も同じように並び終えた。
シャナンが号令をかける。
「進めーーーっ!」
全パーティが山を同じ速度で歩いて進む。
1時間程進んだが魔物の姿は一匹も確認されなかった。
全パーティが一斉に休憩を取る。
セトは水筒の水を飲みながらニールに話しかけた。
「ニール、大丈夫か?」
「ん、大丈夫です」
22歳と若いニールは1年前に狩人になったばかりの新人で、恵まれた体格なのだが若干気の弱いところがあった。
狩人の中で唯一魔物と対峙した事があるセトは、ニールが魔物と遭遇したと時に果たしてまともに動けるのか心配していたのである。
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