天才にして天災の僕は時に旅人「どこでもドア」

天才にして天災の僕は時に旅人

 プロローグで語った時を少しだけ遡る。

 僕はマンションの一室で、ある機器の研究開発に没頭していた。

 そのある機器とはドラえもんで言うところの「どこでもドア」である。

 プロローグでも述べたが10歳で研究を始め、思春期の青春を全て投げ出し、かれこれ7年もの年月を費やしていた。

 ネット調べで恐縮だが、ドラえもんの人気道具ランキングで堂々の1位に輝き、世の中の老若男女が一度は耳にした事があるであろう「どこでもドア」。

 因みに獲得票数は50%弱にも上り、2位の「タイムマシン」と3位の「もしもボックス」をぶっちぎっての1位らしい。個人的には「もしもボックス」が最強だと思っている。

 説明した通り大人気のどこでもドアは、自分が行きたい場所を思い浮かべながらドアを開けると、一瞬でその場にワープできるという至ってシンプルな使用方法でかつ圧倒的利便性のある道具だ。

 だがこれを実際に作ろうと考えた場合、使用方法とは反対にシンプルとはとても言い難い造りになっているのがよく分かる。というか造りを理解する僕の頭脳に乾杯。

 不本意ではあるが、どこでもドアを作る過程と内容は凡人に説明しても理解する事は不可能だろう。補足すると作者も凡人なので、研究開発の過程と内容は割愛させてもらうのが紛れも無く賢明な判断というものである。

 時を跳び跳びで申し訳ないのだが、僕という人間とどこでもドアに纏わる物語をより理解して頂く為に、天才にして天災の僕が「オギャー!」と泣きながらこの世に爆誕した時まで遡ることにしよう。


 信じられない事に僕は田舎の山奥で爆誕した。

 いや、説明が不足過ぎるので解説させてもらう。

 互いに30歳という若さで都会暮らしから抜け出し、田舎の山を購入して静かに生活する夫婦が居た。

 夫は建築家の柱間一舗(はしらまいちすけ)、その妻は医者の柱間響子(はしらまきょうこ)。

 もちろん話の流れからしてこの二人が僕の父と母になる。

 後に母から聞いた話では、父が工事現場で怪我を負って運ばれた病院で担当医になった母。というベタな設定で二人は恋に落ち、自然が好きだという価値観の一致から結婚にまで発展し、山奥に家を建てた。

 山奥で暮らし始めて1年経つか経たないかの時に母は僕を身籠る。

 出産日まですこぶる順調に経過していたある日の昼下がり、リクライニングチェアでうたた寝をしていた母はとてもとても不思議な夢を見たのだった。

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