シャナンが続けて話す。
「私達はエリガ山を通って来ましたが、道中で10匹の魔物と遭遇して戦い仕留めました」
ペタリドの人々が魔物の数を聞いてやはり驚く。
「そ、その魔物はどのような姿を?」
周りと同様に驚いていたマイセンが質問した。
「イヴァイと呼ばれる魔物です。姿はディルに似ていますが、大きさはディルの3倍から4倍程あり、その牙は強力で人間の頭ならひと噛みで砕いてしまうでしょう」
そんな魔物を10匹、、しかも無傷で仕留めたこの部隊の実力は相当なものだと知れる。
シャナンの話はまだ続きがあった。
「それと、空を飛ぶ魔物も発見しました。恐らくあれはガーゴイルと呼ばれる魔物でしょう。もちろん凶暴で中には武器を手に持つ者もいます」
ここまでの話をまとめると明らかに数が増え、ペタリドの町は山に潜む魔物達に囲まれている印象を受けた。
マイセンがまた質問する。
「そいつらは何が目的で山に集まって来ているのでしょうか?」
「人間を狙っているんですよ。魔物は動物も食べますが、人間の肉も好んで食べますから」
聞いていた人々のうち数人が青ざめ吐き気を催している。
自然の恵みにより発展したこの町の人々は、緩やかに時は過ぎ長い間平穏な生活を送ってきた。
平和ボケと言ってしまっては失礼な話だが、自然災害は別として幸か不幸か、何かに狙われて命の危険を感じる様な事は今まで無かったのである。
「アディア城に集まって来る情報に寄れば、世界全体においてまだ緩やかではあるものの魔物の数は増えているようです」
更に訊く青ざめた顔のマイセン。
「我々はどの様に対処したら良いのですか?」
「安心して下さい。その為に私達が来ました。ただ、私達だけでは人数不足かも知れません。良ければ10人程の勇士を募り一緒に掃討作戦に参加して頂きたいのですが…」
リゲールの捜索隊でリーダーを務めたワッドが口を開く。
「それなら山に慣れていて弓矢が使える狩人達が適任だろうな。この後にでも、わしが狩人の連中に話しておこう」
シャナンが笑みを浮かべる。
「そうして頂けると有り難い、よろしくお願いします」
今度はワッドの隣りに居たセトが訊く。
「先ほど掃討作戦とおっしゃってましたが、山に潜む奴らを本当に一掃出来るのでしょうか?」
「もちろん可能です。魔物は単独行動する者もいますが、大抵群れを成していてそれを統率して導く者が居るのです。つまりその統率者を叩けば、あとの奴らは山を出て散りじりになるでしょう」
「なるほど、分かりました。ありがとうございます」
セトは既に勇士として名乗り出る事を決めていた。
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