マイセンは善は急げとばかりに緊急会議が終了して直ぐ、アディア城への使いを手配した。
他の町では遠方に移動する手段として、ローグ(馬系の動物)に乗るのだが、ペタリドにローグは一頭も存在しない。
ペタリドではラゼムと同種で一回りほど大きバセマラ(シカ系)という動物に乗って移動するのが主流となっている。 その日、狩人達は山には入らなかった。
暇を持て余してか、昼間から酒場で酒を飲む者、店で買い物をする者、自宅で仕事をする者など様々である。
セトは家に真っ直ぐ帰りジーナに会議での話を伝えた後は、家での仕事をミアに教えながら片付けた。
家族と触れ合っていると落ち込んでいた気持ちが癒される。
だが、昨日話した時のリゲールの顔が忘れらずやるせない気持ちになるセトであった。
町の緊急発令により、次の日から5日間、狩人達は山に入る事を禁じられていた。
緊急発令4日目にして、アディア城からの応援部隊がエルガ山を通りペタリドに辿り着く。
その部隊は10人編成になっており、それを率いるリーダーは、アディア王国の誇る最高峰の剣の達人組織「剣聖七葉」に若くして任命された「透眼のシャナン」であった。
シャナンの身長は170cmほどでそれほど高い方ではない、髪は黒く色白で整った顔立ちをしていた。
この時はまだ20歳であったが、既に人格者の風格を持ち合わせていて、剣の腕前は剣聖7葉の中でもトップクラスとの噂である。
異名の「透眼」の由来は、ハッキリと公表されておらず、人の心を読む能力があるというのが有力らしい。
マイセンがシャナン達を出迎える。
面識は無かったのだが、アディア城から先に届いていた手紙と噂から一目でシャナンを認識出来ていた。
「シャナン様、ようこそいらっしゃいました。私が町長のマイセンです。長旅でさぞお疲れの事でしょう。ささ、こちらへどうぞ」
集会所の会議室で休憩して貰う為に案内しようとする。
「ありがとうございます町長殿。お言葉に甘えて少し休憩させて頂きます。その際に早速お話したい事もありますので」
「もちろんでございます。話は中で伺いましょう」
町長に案内され部隊の面々は会議室に移動する。
会議室にはリゲール事件緊急会議の時に出席した顔ぶれが揃って待っていた。
シャナンは用意されていた席に座り、テーブルの飲み物の入ったカップを手に取って一口だけ飲み話し出す。
「皆さん初めまして、アディア城からこちらペタリドに馳せ参じました剣聖七葉のシャナンと申します」
これだけの挨拶だったが、この場に居る全員が一瞬で人格者と認める程の効果と威厳を感じていた。
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