その夜、ジーナはミアを寝かせたあと、ミアがレクルと会話が出来る事と、その会話の内容をセトに伝えた。
「ミアはレクルと話せるのか!?凄いな」
当然驚くセトであったが娘の特殊能力に少し喜んでいるようでもあった。
魔物の件が気になっていたのか話し出す。
「実は、家族に心配を掛けたくなくて話さなかったんだが、最近になって北の町で魔物が出たという噂を聞いてはいたんだよ」
「そうだったのね。でもわたしは町でそんな噂を聞いた事が無かったわ」
「俺がその噂を聞いたのは同じ狩人を生業としている連中からだ。恐らくまだそこまで噂は浸透してないのかも知れん」
「じゃあ近くの山に魔物が存在するとしたら町中が大騒ぎになるわね」
「ああ多分な。この間レクルを拾ったのはダリガ山だ。念のため狩人の連中には明日にでも注意喚起しておくよ」
「それが良いかも。でもミアがレクルと会話できる事は何があっても言っては駄目よ」
「もちろんだよ。もし町の人々に知れたらそれこそ大騒ぎになるからな」
5年前、ミアを授かった時は近所の顔見知りへの説明に苦労したものだ。
ストレートに話す訳にもいかず、遠方の孤児院で見つけた子という事にしてある。
当時は悲運な夫婦にやっと子が出来たと、近所の顔見知りから大いに祝福された。
翌日になり、ダリガ山に入ったセトは一人の知っている狩人を見かけ近づき声を掛ける。
「おはよう!リゲール今日も天気が良いな」
「ああセトか、おはよう。最近は雨が降らなくて助かるよ」
「そうだな。ところで北の町で魔物が出たって話は知ってるよな?」
「この間その話をバーグから聞いた。こっちまで来なきゃ良いんだが」
「いや、もしかしたら魔物はこの近辺まで来てるかも知れないんだ。昨日エルガ山でたまたま会った旅人が魔物を目撃したと言っていたよ」
「本当かそれは!?本当なら町の者達にも知らせなければならないな」
リゲールはこのまま町に降りて知らせる勢いだ。
「待て待て、まだ確実ではない話だ。毎日山に入る狩人の連中には知っておいて欲しくてお前に伝えたんだよ」
「ん…そうか、下手に騒ぎ立てない方が良いかもな。分かった。俺も他の狩人に会ったら気を付けるように言っておくよ」
「そうして貰うと助かる。お互い注意して狩りをしよう」
セトは午後にもう一人別の狩人にも同じ様に魔物の話を伝えた。
伝えたのは二人だけだったが、上手く狩人達には伝わっていくだろう。
その様に考えていたセトは、夕方になり少し薄暗くなったダリガ山を降っていた。
コメント