すると、物体の破けた箇所から薄い緑色の発光体が飛び出し、二人の目の高さでユラユラと浮き留まった。
「こ、これは人の魂か!?」
「…分からないわ。でも、この光から柔らかくてな大きな優しさを感じる」
夫婦は優しさで癒される感覚を共有していた。
宙に浮く発光体から声が聴こえる。
「ワタシはこの星の守護者です。星の未来のためにあの子を託します。名を付けあなた方の子として大切に育てるのですよ」
それだけ云うと発光体はフッと跡形も無く消えてしまった。
二人は互いの顔を見たあと腰が抜けたのかヘナヘナと座り込んだ。
「守護者様から子供を授かってしまったわね。あなた」
「あ、ああ。これは夢だろうか…」「わたしあの子を見に行って来ます」
「あ、ああ…そうだな」
ジーナは抜けた腰に力を入れ1階に駆け上がって行った。
放心状態の長かったセトも少し遅れて駆け上がる。
ジーナは既に赤ん坊をクーファンから取り上げ身体をタオルで包み、優しい母親のの様に笑みを浮かべて赤ん坊の顔を覗き込んでいる。
そんな姿を見たセトは胸が熱くなり目から自然に涙が溢れ出てた。
結婚してからどんなに願ってもずっと子供を授かる事は無かった。時にはそれが原因で夫婦喧嘩をして、一日中二人で涙が枯れるまで泣いた日もあった。昨日まではすっかり子供の話しすらする事も無くなっていた夫婦。
形はどうであろうとも、長年子供に恵まれなかった不運の夫婦にとって、子供を授かったこの瞬間がどんなに奇跡的で幸せな出来事であっただろうか。
セトはジーナにゆっくり近づき両腕を目一杯広げ、赤ん坊と一緒に優しく包み込んだ。
「あなた、この子は女の子よ。寝顔がとても可愛いわ」
赤ん坊を起こすまいと小声で話す。
「きっと君に似てとびきりの美人になるさ」
「フフフ、そうね。きっと美人になるわ。明日はベビー用品の買い出しに出掛けましょ」
「そうだな。必要な物は全て揃えよう。足りない物があったら俺が作る」
実際のところセトの木を使って作る備品や道具は職人級であった。
「この子の名前も考えないといけないな」
発光体が云った言葉を思い出す。
「実はね。あなたには黙っていたのだけれど、子供を授かったら付けたかった名前があるの」
「君は気を遣ってずっと言えなかったんだね。何て名前か善かったら教えてくれ」
「男の子だったらラグナ。女の子だったらミア。だからあなたさえ善ければ、この子にはミアという名前を付けたいわ」
「ミア…素晴らしい響きだ。反対する訳もない。喜んでその名前に賛同するよ」
「ありがとうあなた。可愛い子ちゃん、これからあなたの名はミアよ」
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