営業キャッシュ・フロー対負債比率
営業キャッシュ・フロー対負債比率(%)=営業キャッシュ・フロー÷負債(期中平均)×100
この分析比率は、営業キャッシュ・フロー対流動性比率と同様の考え方に立ち、負債に対して営業活動の現金および現金同等物創出能力がどの程度であるのかを測定し、企業の本業である営業活動の債務返済能力を判断するための比率である。
営業キャッシュ・フロー対流動負債比率
営業キャッシュ・フロー対流動負債比率(%)=営業キャッシュ・フロー÷流動負債(期中平均)×100
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローの区分では、企業の本業である営業活動から生じた収入と支出が表示される。その収支差額として算出される営業活動によるキャッシュ・フロー増減額は、企業の営業活動がどの程度の現金および現金同等物を生み出しているか(すなわち本業の現金および現金同等物創出能力)を示すという意味で、最も重要なキャッシュ・フローの指標である。
営業利益
営業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除したものをいう。これは、営業収益(一般の売上高)から営業費用(売上原価、販売費及び一般管理費)を控除した営業活動上の利益を示すものと理解しておく。
営業利益増減率
営業利益増減率(%)=(当期営業利益ー前期営業利益)÷前期営業利益×100
企業本来の営業活動から達成した営業利益がどのような成長性をあらわしているかを示す。建設業においては、販売費及び一般管理費は固定費の性格が強いと考えられるので、完成工事高の推移が営業利益の増減にかなり直接的な影響を与える。通常は完成工事高増減率より激しい動きを示すものである。
買掛債務
工事未払金、支払手形等をいう。
外注費
外注費とは、外部の企業に対して発注し、下請企業等によって施工された部分に係る費用をいい、完成工事原価報告書において、完成工事原価の内訳として示されている。
回転期間
売掛金の回収サイト(販売後、回収までに要する期間)を意味している。
回転率
経営分析において、企業の資産、負債、資本等がある一定の期間にどの程度活動(運動)したかを示す指標。
外部分析
外部分析とは、企業外部の関係者のニーズによって、企業から公表されたデータに基づいて実施される財務分析をいう。ここでの外部の関係者とは、必ずしも利害関係者ばかりとはいえないが、ほとんどは当該企業の盛衰と何らかの利害を有する者である。利害関係者の代表的なものは、投資家、株主、銀行等の与信者などであるが、それらと分析の目的は次のようになる。
投資家
企業の株式あるいは債券を購入すべきか否かの投資意思決定の情報を得るため。
株主
企業が適切な収益力を保有しているか否か、あるいは自分の保有する株式を売却すべきか否かの判断資料を得るため。
銀行等
企業が債務を返済していく能力を有しているか否かの判定資料を得るため。短期的には運転資本に目を向けた支払能力ということになるが、結局は企業の収益力にも注視していくことになる。
監査人
企業の経理もしくは会計が、適正妥当な会計基準に従って処理されたか否かの監査を進めるための参考資料を得るため。
税務当局
企業の申告した所得が適正に算定されたか否かについて、多角的な視点からの情報を得るため。
組合
ベースアップや手当等の交渉にあたって、要求のための適切な根拠を設定する資料を得るため。
いずれにしても、これらの外部分析においては、制約された情報の範囲内での分析が特徴的である。別言すれば、情報の非対称下(受け手の情報が限定される状況)での財務分析となる。
固変分解
固定費と変動費に分化する方法には個別費用法と一括分解法(総費用法)がある。個別費用法は個々の費用項目ごとに、この固変分解を実施していく方法で、一括分解法はある特定範囲の費目あるいは全部の費目を一括して固変分解する方法である。個別費用法が厳密であることはいうまでもないが、固定費・変動費の分解は、総体としての意味を重視することもある。
活動性の分析
活動性の分析は通常、回転率もしくは回転期間によって表現される。回転率とは資本等が、ある一定期間に何回入れ替わったかを示す回数である。また回転期間とは、資本等が一回転に必要とする期間をいいう。
株主持分
株主が会社の資産に対してもっている請求権のことで,投資家持分と呼ぶ場合もある。持分とは,元来法律上の概念であり,債権者の請求権のみを意味したが,現在は会計学上貸借対照表の貸方側を統一的に表現するために持分という概念が適用され,このアプローチによれば資産=持分の等式が成り立つ。したがって株主の請求権に対して,株主持分という概念が使用されている。その金額は企業が所有している資産総額から負債総額を控除した差額として決定され,企業の純資産または純財産を意味している。債権者持分が負債 (他人資本) をさすのに対して,株主持分は資本 (自己資本) をさしている。
借入金依存度
借入金依存度(%)=(短期借入金+長期借入金)÷総資本×100
借入金依存度は、企業活動に必要な資金のうち、借入金によって調達したものがどの程度あるかを示す比率である。ここでいう企業活動に必要な資金とは、運用資産全体をいうものであるから、分母は総資本となる。これは、自己資本比率と逆数のような関係になるから、一般的には低い方が財務健全性は高いと判断される。
借入金自己資本依存度(%)=(短期借入金+長期借入金+自己資本)÷総資本×100
債務たる借入金に自己資本を加えて、その総資本に占める割合を測定することがある。これを借入金自己資本依存度という。一般的な意味からすれば、長期の借入金と自己資本とは、資本調達の大勢を占めるはずであるから、他産業の多くの企業では、この比率は100%に近くなると予想される。しかし建設業では、他の流動負債、たとえば未成工事受入金や支払手形の比率が高いケースが多いので、この比率はせいぜい50%前後程度である。
関係比率分析(特殊比率分析)
関係比率とは、概念は異にするが相互に関連のある項目間の比率を意味し、特殊比率ともいわれる。この関係比率を用いて、企業の収益性、活動性、生産性、流動性、健全性等の測定をすることを関係比率分析といい、財務分析のなかで最も普及している手法である。
勘定科目精査法
原価ないし費用を勘定科目の別に内容を精査して、これは固定費、これは変動費という具合に決定していく方法。個別費用法の一つである。原価の中には、変動費と固定費の区分に単純に当てはめることが困難なものも多いので、この方法は必ずしも論理的とはいえない。しかしおおよそ振り分けやすい場合には、問題は少ないので実質的に広く利用されているといえる。
関数均衡分析
関数均衡分析とは、資本、収益、費用などの個々のデータ相互間の平均点あるいは分岐点を図表や算式を使って算出し、利益管理や資金管理に活用しようとする分析技法である。具体的にはCVP(cost-volume-profit)関係の分析において中心的な技法である損益分岐点分析、資本の回収構造を分析する資本回収点分析、キャッシュ・バランス構造を分析するキャッシュ・フロー分岐点分析がその代表的手法である。
完成工事原価報告書
完成工事原価報告書とはその名の通り「完成工事に要した原価の内訳を記載する書類」のこと。株式会社など法人の建設業者に作成が義務付けられていて、材料費、労務費、外注費、経費の各項目ごとに原価の内訳を記載する。
完成工事高キャッシュ・フロー率
完成工事高キャッシュ・フロー率=純キャッシュ・フロー÷完成工事高×100
ここにおけるキャッシュ・フローあるいは純キャッシュ・フローとは、期間業績活動の中で獲得した純資金流入額を意味する。
純キャッシュ・フロー=当期純利益(税引後)±法人税等調整額+当期減価償却実施額+引当金増減額-株主配当金
法人税や住民税などの利益(所得)に課される税金が現金の流出になり、還付の場合は逆に流入になることは、当然の理解を得られよう。また、当期減価償却実施額と引当金増加額とは、現金収支を伴わない取引であるから、原則としてキャッシュ・フローに加算される。株主配当金は剰余金の配当による社外流出項目としてキャッシュ・フローの減額となる。
経審では「キャッシュ・フロー対売上高比率」として、この指標が収益性分析の一つに加えられている。なお、この場合の売上高は、建設業の完成工事高に兼業の売上高を含んだ会社の売上高である。
完成工事高営業利益率=営業利益÷完成工事高×100
完成工事高経常利益率=経常利益÷完成工事高×100
完成工事高総利益率=完成工事高総利益÷完成工事高×100
完成工事高増減率=(当期完成工事高-前期完成工事高)÷前期完成工事高×100
完成工事高対外注比率(%)=外注費÷完成工事高×100
完成工事高対金融費用率(%)=金融費用÷完成工事高×100
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