世界樹とハネモノ少女  「木の実」

世界樹とハネモノ少女

 夫婦は転がっている謎の物体を暫くジッと観察している。

 球体の大きさは50cmほどで、外観は筋が不規則に無数あり黄緑色をしていた。

「何だろうな…良く見てみれば、異常に大きくなった植物の実の様に見えなくもないが…」

「でもこんな形をした植物の実って見たことが無いわね…」

 二人とも腕組みしながら過去の経験や知識と照らし合わせ考えてはいたが、一向に過去のそれと一致、若しくは近い物を思い出す事が出来なかった。

「ただ観て考えていてもしょうがない。まずは触ってみるか」

 セトがそう言って物体を持ち上げる。

「お、想像したよりずっと軽いぞ。それに表面の皮は固いが弾力もあって丈夫そうだ」

 ジーナもペタペタと触って確かめた。

「昨夜見た物体ってこれで間違いないわよね?そこの木から成ったって訳でも無さそうだし…」

「恐らくこれだと思うよ。鳥達の異様な行動といい、さっきの突風といい何か特別な力が関係してる感じがするよ」

「そうねぇ、わたしも不思議な感じがするわ。きっとこれに違い無いわね」

 夫婦は共に、表現の難しい不思議な力を体感しているのかも知れない。

「これをずっと観察していても拉致が開かないな。家に持ち帰って暫く様子を見てみよう」

「分かったわ。持ち帰って色々調べてみましょう」

 セトが自分のバックパックの上にロープで縛り付け、取り敢えず家まで運ぶ事にした。

 帰り道は特に問題も無く、途中でジーナの手作り弁当を食す。そのあとは寄り道もせずに家へと無事に辿り着いた。

 家のドアを開けてバックパックを床に下ろし、物体を縛っていたロープを解いてセトが提案する。

「ノコギリで外側を切って、中を開けて見るってのはどうだろうか?」

「もう、ちょっと待って。わたしが調べるって言ったでしょう。今から図書館に行って調べてくるわ。腐ったら大変だから何処か陽の当たらない場所に置いといてくださいな」

「ごめんごめん、忘れてた…そうだな、地下室にでも運んで置くよ」

 ジーナは早々と汚れた服を着替えて、町の図書館へと出掛けて行った。

 セトは物体を地下室に置いたあと、庭で調理と風呂用の薪の準備を済ませる。

 そして、コーヒーを煎れてキッチンの椅子に座り、飲み干していつの間にかそのまま眠ってしまった。

 陽が沈み暗くなった頃にジーナは家に帰り着く。

 セトは眠ったままだったのか、家の灯りは点いておらず暗い、キッチンまで手探りで移動してランプに火を灯した。

 椅子に座ったまま寝ていたセトを見つけ、起こそうと近づくと…

「はっ!?」

 ジーナは心臓が止まりそうなほど驚く。

 セトの膝の上で裸の赤ん坊が身体を丸めて寝ていたのである。

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