休憩に最適な岩場を見つけ、二人は腰掛けて水筒の水を飲む。
「こうやって二人で紅葉した木々を観るのは5年ぶりくらいかしらねぇ」
「最後に観てからそんなに経ったのか、時の流れは本当に早いな」
今回は探索が目的で山入りした二人であったが、いつの間にか紅葉狩りを楽しんでいるようでもあった。
「俺の予想では、あの出っ張りを越えた先辺りに落ちたと踏んでるんだがどう思う?」
セトが数百メートルほど先にある山の出っ張りを指差して意見を聞く。
実のところ若い頃はジーナの方が山の地理に詳しく視力も良かったものである。
「そうねぇ…昨夜の光の軌跡を見た感じだと、あなたの言う通りあの出っ張りの先辺りだと思うわ」
「君にそう言って貰えれば心強いな。そろそろ動こうと思うけど大丈夫かい?」
「ええもちろんよ。早く探し出して確かめましょ。わたしはずっとワクワクしているわ」
山道は舗装された道と違い、傾斜があったり石ころなどが転がっていて歩き辛く気を使い体力も奪われる。
だが今日のジーナは身体的な疲れよりも、好奇心から来る高揚感が遥かに優っているようだ。
やがて二人は先ほどセトが指差した出っ張りを苦労はしたものの、セトがジーナをフォローつつ何とか越えて進む。
越えた先には大きな森が広がっていて、太陽の光を浴びた紅葉が非常に美しく輝い見えた。
森を高台から眺られる位置にあった二人は、目を凝らし森の隅々まで確認する。
「あなた、あそこを見て!鳥達が集まって何か騒いでいるようだわ!」
ジーナが指差す方向にセトが目を向ける。
セトは妻の何年経っても変わらぬ目の良さに感嘆した。
「おお、流石はジーナ!その目はまだまだ衰え知らずだな。あの鳥達の集まってる場所へ行ってみよう」
森に入り、目標の方角を間違わないように注意しながら足を進める。
暫く歩き目標の地点までたどり着くと、一本の大きな木の周りを、ざっと1,000羽以上の鳥達がグルグルと飛び回っていた。
奇怪さを感じるほど異様な光景であったが、まるでその大木を守っているようにも見える。
そして、またもやジーナが何かを発見したようだ。
「木の真ん中辺りの枝に、球の形をした緑色の何かが引っ掛かっているように見えるんだけど、あれは何かしら?」
「…あんな物、今まで見た事もないぞ」
セトにも目視できたが、その物体が何なのか判断がつかずにいると…
「ビュオーッ!」と木の真上から凄まじい突風が吹きあれだけいた鳥達は、あっという間に何処かへ散りじりに飛び去っていった。
「あっ!これって…」
いつの間にか二人の目の前に、先ほどまで木の枝に引っ掛かっていた正体不明の物体が転がっていたのである。
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