「へ~。約束破りの王のくせに口だけは達者なんだなぁ。ちょっと呆れたぜ」
匡が呆れるのも無理はない。カラハグは接近戦をするのは危険と判断し、吐いた言葉とは裏腹にゆっくりと後退りして距離を広げていたのだから。
「これくらい距離があれば十分だろう…貴様に云っておく!戦いとは、状況に合わせ臨機応変に対応し勝利を掴むものだ!命懸けの戦いにプライドや威厳など何の役にも立たないことを我は悟ったのだ!」
正論だ。
だが、その正論は匡を白けさせただけで感慨や関心はこれっぽっちも浮かばなかった。
「はっはっ~。所詮は『カラスの中だけの王』だったようだな!もう会話は無意味だ!お得意の衝撃波をフルパワーで撃って来いよ!僕はここから一歩も動かない!お前と違って必ず約束は守ってやるるぜ!」
匡の自信たっぷりな口の利き方に不信感を募らせるカラハグ。
しかし、生まれて初めて経験した恐怖心から既にプライドを捨てたとはいえ、カラス王は自身が負けることなど微塵も考えてなどいない。
「カッカッカッ!笑止!貴様も我の技の破壊力は体験しているだろう?あれは半分の力も込めていなかったのだぞ。それに加え以前より力の増したフルパワーの技を受けて立つとは。正気の沙汰とは思えんがな!?」
黙って訊いていた匡が冷め切った表情で返す。
「会話は無意味だと言ったろう!馬鹿カラス!御託はいいからさっさと撃てよ!」
「人間ご伽がほざいたな。よかろう。あの世ので後悔するがいい!」
今までの戦いでほとんど感情を表に出さなかったカラハグが怒りを露わにし、顔を歪ませ技の威力を上げるため力を溜める。
対峙する二人の様子を見る二つの人影。
「おいおい、匡の奴たった一人でカラハグと戦ってるぜ。助太刀に行くぞ!」
瓦礫の影から飛び出そうとする柴門の肩を飛鳥井がガッと掴み引き止める。
「いや待て柴門。今の俺達が行っても足手まといになるだけだ。それより匡の雰囲気が以前と違う。いざとなったら俺が救出するから暫く様子を見よう」
「くっ、わぁったよ」
柴門は渋々納得し、二人は瓦礫の後ろから戦いの行方を見守ることにした。
「ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
力を溜めるカラハグの身体から黒いオーラが溢れ出し、空間が歪むかのように空気が揺らいでいたが、その現象が突如ピタリと止んだ。
カラハグが弓を引くように右腕を後ろへ構える。
「貴様がこの世で目にする最期の技だ!死んでしまえ!フルパワー!クロウインパクトーーーーーーッ!!!」
見た目にも今までの倍以上の破壊力があるであろう衝撃波が右拳から放たれた!!
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