四人と一匹の目線の先には、「ギガントボム」による攻撃を受け、身体に黒い焦げ跡の残るカラハグが、焼けて一部欠損した翼をバサバサとはためかせ上空で高さを保っていた。
「くそっ!やりきれなかったのか!!」
相手に防御する暇も与えず、渾身の「ギガントボム」を放ち粉々にしてやったと勝利を確信していた柴門が歯軋りする。
彼のその判断は並の強敵が相手であれば確信を持って間違いはなかったであろうが、相手はなんと云っても他のカラス達とは別格のカラハグ。
実際、「ギガントボム」が起爆する寸前、カラス王は驚異的な身体能力により衝撃波技なる「クロウインパクト」を発動し、爆発の破壊力を三割ほど軽減させていたのである。
とはいえ、カラハグに与えたダメージは相当なものと判断して差し支えないだろう。飛鳥井達が直ぐに反撃を受けなかったのがその証拠だったのだが…
カラハグがボロボロになった身体を動かす!
観察眼に自信ありの飛鳥井が全員に告げる!
「あいつ撃ってくるぞ!みんなここを離れろ!俺は下の三人を拾う!」
「ヴン!」
飛鳥井が部屋にいる葵、結月、匡の三人の元へ瞬間移動したその時!
「クロウインパクト!!!」
「シュヴァッ!!!」
家屋ごと吹き飛ばすつもりのカラハグが、音速で破壊力抜群の衝撃波を上空より放った!!
直前の飛鳥井の指示により元いた鉄壁の天辺からある程度離れていた八神、柴門、美琴、チャラがそれぞれ別々の方向へ避難する!
「ズッ!ヴァヴァヴァーーーーーーーン!!!!!」
目標に衝撃波が到達し、メンバーの居た家屋とその周りの数軒を一瞬にして粉々にしてしまった!
別の家屋の屋根上に移動して難を逃れた八神が呟く。
「飛鳥井君は無事に三人を救出できただろうか……」
八神が心配するのは当然だろう。
飛鳥井が姿を消してから辺りが戦場跡のようになるまでに要した時間は僅か数秒だったのだから。
「あいつもしかして回復を図ってるんじゃないか?…」
メンバーの中で唯一上空のカラハグから目を離さないチャラが異変に気付いた。
そう、大ダメージの回復を待たずに放った大技「クロウインパクト」により、圧倒的体力を誇るさしものカラス王にもいよいよ疲労の色が見えつつあり、地上へゆっくり降り立とうとしていたのである。
「カカッ。一人も始末出来なかったか。しかしこの我がこのように無様な姿になろうとはな。少し回復したのち、無駄撃ちをやめ一人一人確実に狩っていくか…」
自己の生物探知能力によりメンバー全員の位置を把握したカラハグの独り言は、まだ飛鳥井達メンバー全員が生存していることと、カラス王の失われぬ戦意を示していた。
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