僕達の世界線は永遠に変わらない [二度目の対峙]

僕達の世界線は永遠に変わらない

 心なしか、青ざめて見える葵がチャラにことの経緯を説明する。

「驚かずに聞くのよ。あのね。君と匡君がカラハグにワンパンであっさりやられたあと、飛鳥井さんがここへ君達を連れて来てくれたの。そしたらカラハグが直ぐにここへ向かって来たんだけれど、結月ちゃんと美琴の二人で何とか食い止めているところなのよ」

「ニャニッ!?カラハグがそこに居るのか!?」

 動揺したチャラが人の言葉と猫の鳴き方の狭間で言葉を噛んだ。

「慌てて飛びかかってはダメよ。ギリギリまで飛鳥井君達が戻るのを待って一緒に戦うの。二人を守って…ね……….」

 ヒーリング能力を使い果たした葵が言い終わったあと、全力で能力を使い続けた代償なのか、部屋の床に力無くふらっと倒れ気を失った。

「……..葵、お疲れさま」

 チャラは葵の頬を軽く軽く舐め、そのそばで横になっている匡に気付く。

「匡、君もやらちゃったのか…ごめん。オレがあいつを怯ませることが出来なかったばっかりに…」

 葵の全身全霊の介抱により、瀕死状態からほぼ完全に回復したチャラではあったが、流石に今回ばかりは反省しているようである。

 匡は側から見れば外傷も回復してただ寝ているようでもあった。

 しかし、彼の意識は未だ戻らない…

 部屋を見渡し、外に通じるもう一箇所の窓が目に入ったチャラがそこから外に出て地上に足を着けた。

「…能力で奴を閉じ込めているのか…でもあの様子だと二人ともそろそろ限界が近そうだな…葵の願い通りオレが彼女達を守ろう…超爆電気!」

 緊張感高まる状況に、復帰したばかりのチャラがいきなり全開のトランス状態を発動し戦闘態勢をとる。
 
 自己の持つ生物探知能力によって最初から知っていたであろう、「プリズンロック」に閉じ込められているカラハグがチャラに視線を落とす。

「先程無謀にも我に突っ込んで来た猫か?幸か不幸かせっかく拾った命だ。無駄にせずとっとと逃げればいいものを。今なら奇跡的に逃げきれるかもしれんぞ?」

 内心イラッとしたチャラではあったが意外にも冷静な口調で返す。

「だ〜れが逃げるかこの馬鹿カラス!今度こそてめぇの頭を噛み砕いてやる!」

「カカッ!あれほど無様なやられ方をしたというのに中々図太い奴だな。だが何度かかって来ても結果は同じだ」

「グルルル…」

 あいも変わらずな余裕のカラス王に言葉は返さず、ただグッと耐えて牙を向ける時を待つことにしたチャラが喉を鳴らした。

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