「結月ちゃん。牢獄の位置を維持するためのフォローをするわね」
美琴が結月と同じような格好をしてサイコキネシスを発動し、カラハグを閉じ込め空中に浮く牢獄の位置維持に助力する。
「あっ!?楽になったわ。ありがとう美琴さん!」
「これでもうちょっと長く閉じ込められるようになったと思う。頑張りましょ結月ちゃん!」
「うん!」
美琴のフォローのお陰で結月は牢獄「プリズンロック」の強度だけに集中できるようになり、暫くのあいだ女性二人とカラハグは睨み合う形となった。
「チャラァ。わたしも頑張るからあんたも頑張ってよね…」
二人の後ろでは葵がヒーリング能力全開でチャラの回復にあたっている。
その横に気絶して床に横たわる匡は頬骨を砕かれ、首の骨を完全に折られた普通の人間ならば瀕死の状態ではあったが、真っ青だった顔は薄らと赤みを帯び始め、自己治癒というヴァンパイアを彷彿させる能力によって確実に快方へと向かっていた。
「ヴン!」
「おっ!?みっけ!?」
無造作に家屋の屋根上に降り立った飛鳥井は、柴門と八神の二人を探して連れ帰るつもりだったけれど、彼の視界には当の二人の姿が直ぐに映り、探す手間だけは省けたことに安堵する。
限定的に安堵する状況になった理由は一目瞭然、二人は200羽の化け物カラス達と交戦の真っ只中だったのだ。
「なんだ。もうやり合ってたのか…さて、二人をこのまま直ぐに連れ帰るか、それとも俺も戦いに加わって一掃してからにするか…うん、結月ちゃんが心配ではあるが後方の憂いは絶っておくべきだな」
「ヴン!」
飛鳥井は素早く決断し戦闘に参戦した。
「ヴン!」
「ズザン!」
屋根の上で戦う柴門の後方に現れた飛鳥井が化け物カラスを一刀両断にする。
そして少し離れて戦う八神さんに視線を向けて叫ぶ。
「八神さん!柴門!俺も加わるから速攻でこいつらを片付けて葵さん達のいるところへ移動するぞ!」
急に現れた飛鳥井には目もくれずに戦う柴門が訊く。
「おいおいカラハグはどうなったんだ!?あいつらだけで大丈夫なのか!?」
カラハグの実力を知る柴門なら飛鳥井の行動を疑問視するのは当然であろう。
「ザン!」
手を緩めることなくまた一羽の化け物カラスを切り捨てた柴門が答える。
「端的に云うぞ!匡とチャラがカラハグにやられて戦闘不能!葵が回復にあたって結月ちゃんがやつを食い止めているがそう長くはもたない!だから全力でコイツらを片付けて戻るぞ!こっから質問は受け付けない!とにかく早く!だっ!」
コメント