美琴がサイコキネシスを発動させた時点で敵に位置はバレていた。
人間が何人いようと構わないといとでも思っているのだろう。カラス王カラハグは何も恐れることなく、単騎で翼を広げ真っ直ぐ部屋へと向かっていたのである。
「やっぱり回復の暇をくれるほど甘くはないか…みんな!急いで俺に触れてくれ!」
飛鳥井は応戦することを諦め、この部屋から移動して逃げる判断を下した。
一人と一匹は戦闘不能で葵も回復で手一杯、今の戦力で交戦すればかなりの高確率で全滅させられてしまうだろう。
彼の判断はリーダーとしてベストだったであろう、が。
「待って!飛鳥井さん!わたしに試したいことがあるの!」
結月が初めて飛鳥井の指示に従わず、涙を拭きながら窓際に駆け寄った。
既にカラハグはあと10mというところまで近づいており彼女と真っ直ぐに目が合う。
結月はカラハグの眼力に気圧されることなく叫ぶ!
「カラス王!あなたを牢獄に閉じ込めてあげる!プリズンロック!」
「ガン!」
「カッ!?」
それほどスピードを上げていなかったとはいえ、突然目の前にバリアの壁が現れ、避けきれなかったカラハグがもろにぶつかり進行を止めた。
上下を見て後方も確めたが、同じようにバリアの壁が出現している。
結月は出力全開のバリアによるキューブ状の牢獄を忽然と空中に作り出し、敵を閉じ込めることに成功したわけだが、問題はこの牢獄に継続して閉じ込めておける強度があるのかどうかだろう。
カラハグがなぞるようにバリアを触り分析する。
「カカッ!これは面白い!この牢獄は我の力を持ってしても破れそうにないな。衝撃を放てば我に跳ね返り、殴って破壊しようとすれば拳が砕けてしまうだろう。見事だぞ小娘!カッカッカッ!」
牢獄に閉じ込められ自由を奪われたというのに余裕で笑い飛ばすカラス王。
だが、彼の分析は恐ろしいほど的確であった。
結月の作り出した「プリズンロック」なる技は今まで作り出したバリアとは異質のもで、攻撃を全て弾き返してしまうという「リフレクトバリア」を反転させた奇抜な発想の賜物なのである。
「結月ちゃん凄い!そんな技いつ思いついたの?」
すぐ横で驚きの表情をしている美琴が訊いた。
「飛鳥井さん達が戦ってる最中に何かできないかと考えてたの。でも、たぶんこの技を維持できるのは15分くらいかな…」
カラハグに両の掌をかざすように向け、「プリズンロック」の強度を維持しながら彼女は答えた。
「よし、結月ちゃん。済まないが10分だけ踏ん張ってくれ。その間に柴門と八神さんを連れてくる」
「ヴン!」
飛鳥井はそう言い残して部屋から姿を消したのだった。
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