「カカカッ。貴様、我の話を聞いて内心穏やかではないな?なかかな良い表情をしているぞ。我は貴様らを駆逐し、さらに強くなってまずは東京を支配するつもりだ。つまり貴様らの存在など我にとっては強くなるための糧でしかない。もっと我を恐れて良いのだぞ。カッカッカッ」
「……確かにおもしろい話が聞けたねぇ…」
王に見透かされた飛鳥井の内心は確かに穏やかでは無かった。
だが、決して臆病風に吹かれているわけでは無く、カラハグが余裕を見せて笑っているこの隙を狙い、首を斬り落とせないものかと思案していたのである。
「カカッ。我の首をその刀で斬り落としたいようだな。貴様の能力が瞬間移動だということは把握している。いつでもかかって来るがいい」
「………….なる……..」
このカラス王の感覚は既に研ぎ澄まされている。そう思った飛鳥井は現状での虚をつき首を斬り落とす作戦を断念した。
まるで心を丸裸にされるようなカラハグの言葉に、流石の飛鳥井も気圧されつつある。
カラス王カラハグの異常なまでの覚醒…
そもそも生物が覚醒し、新しい能力を手にしたり姿を変形させること自体が特別なことなのだけれど、幾つもの能力を身につけ、成長スピードが異様に早いこのカラス王は特にスペシャルな存在だとでもいうのだろうか?
答えは残念ながらYESである。
「神の戒告」発動時からして、世界中の生物で気付いている者の数はまだ少なかったのだが、この世界では稀に「特別な細胞」を持った生物が存在するのは間違いの無い事実であった。
「特別な細胞」はのちに「キングス・セル」と名付けられ、世界中で恐れられることになる。
この「キングス・セル」を持つ者は、他の生物とは比較にならないほど高い能力を身につけることが可能で、成長期という概念を度外視するが如く身体能力も著しく発達するのである。
自己よりも能力の低い持たざる者を支配し、率いる資質を存分に備えた王の細胞「キングス・セル」。
今在る世界が「神の戒告」以前と変わぬところがあるとすれば、形こそ違えど「不平等な世界」であることだったのかもしれない…
「貴様らを狩る前に一つだけ褒め称えてやろう。能力の高い我が幹部四人衆を見事打ち倒した。それに関して我に怒りなど無い。むしろ感心してさえいるぞ。カッカッカッ」
自分の部下を倒されて笑っていられる王を認めて良いのかどうかは別として、飛鳥井はいよいよ始まる死闘を前に、何よりも早く行動しなければならないことがあった。
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