作戦を組み立てる時間を奇しくも失ってしまった飛鳥井が、ためらう暇など微塵も感じさせずに指示を出す。
「いいか、みんな。一回しか言わないぞ。女性陣は家屋に隠れてサポート!八神さんと柴門、匡とチャラはそれぞれペアを組んでいつでも戦えるように戦闘態勢を取ってくれ!俺は単独で奴らの出方を探る。とにかくカラハグだけは要注意だ!全員生き残って奴らを殲滅しよう!」
メンバー全員が飛鳥井の指示に呼応し、目配せやジェスチャーなどを使いながらそれぞれがその場から散って行った。
公園に一人残った飛鳥井が呟く。
「みんな…本当に死ぬなよ」
「ヴン!」
瞬間移動の使い手が居なくなり、七人と一匹の居た小さい公園は無人となった。
「ヴン!」
カラハグ率いる最後のカラス部隊に随分と近い場所に位置する二階建ての家屋。その屋根上の何も無い空間に突然姿を現す飛鳥井。
200羽ほどのカラス部隊を凝視しながら立ったまま静かに待ち、背中に結びつけておいた刀の柄に右手を伸ばして鞘から引き抜き切先を地に向けた。
揃った速さで進軍していたカラス部隊が、飛鳥井との距離を100mほど残したところで進軍を止め、その付近に在る建物や電柱などに降り立ち始める。
「やっぱりな…思った通りだ。カラス王ならそうしてくれると信じていたよ」
飛鳥井は、自分がわざと目立つようにこうして立っていれば、カラハグの性分からして単独で近寄って来るに違いないと踏んでいた。
何故なら、あのカラス王は自身の戦闘能力に絶対の自信を持っていると理解しているからである。
事実、前回の柴門達との戦闘においても三人の実力が定かで無いのに関わらず、躊躇なく三人に近づき窮地に追いやった。
思惑は的中し、カラハグが王らしく優雅に空を舞いながら近寄り、飛鳥井の立つ家屋正面の、同じく二階建ての家屋の屋根上にゆっくりと着地する。
「…貴様か。これで会うのは三度目だな」
「…ほ〜、これは光栄だ。覚えててくれたんだねぇカラス王。しかも初めてあんたを見た時は俺が一方的に観察していたと思ってたんだが、あんたは気付いてたんだねぇ♪」
無表情な筈のカラハグの顔が笑う。
「カカカッ。折角だ。貴様ら全員を血祭りに上げてしまう前におもしろいことを教えてやろう」
飛鳥井は背中にゾクっとするものを感じたが、敢えて余裕の表情を作り出す。
「へぇ〜、それは楽しみだな。出来ればストレスが解消されるようなおもしろい話を聞きたいもんだが…」
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