「実際にカラハグと戦闘した柴門君がそう言うなら…」
八神はそう言ってあっさりと口を閉ざす。
昨夜の夕食時に険悪な雰囲気だった柴門と八神だったが、今日、化け物カラス達との戦闘で互いに連携し助け合ったことが彼らの友情と信頼を育んでいた。
「え~っと、俺もカラハグに一撃入れて体感した当事者なんだけれど…ま、いっか」
少し納得がいかなかった飛鳥井ガボソっとそうこぼしたが、「今はそれどころではない」と思い頭を切り換える。
「あっ!?これは伝えておかないとなぁ。カラハグはずば抜けた身体能力の他に衝撃波的な技を使えるぜ。遠隔攻撃もして来るから要注意だな」
「衝撃波か…なかなか厄介そうだ。柴門、カラハグについて他に知ってることはあるか?」
「そうだなぁ…..すまん、もう無い。奴と戦ったと云っても、あっという間にやられちまったもんだからあんま教えられる情報はねぇな」
柴門は頭を掻きながら苦笑いした。
「はい!わたしからも一つ」
会話に参加するタイミングを伺っていた美琴が右手を軽く上げ話し出す。
「ネガティブなで申し訳ないけれど、あいつの動きをサイコキネシスで止めるのは難しいかも…フルパワーで止めようしたら徐々に効かなくなって最後には平然と動いてた。だから作戦を立てるならその線は捨てた方が良いと思」
美琴の話を聞いた飛鳥井が眉をひそめる。
「ふ~ん。単純な物理攻撃だけじゃなくて、サイコキネシスみたいな特殊能力も効きづらいのか…奴にはまだ特別な何かがありそうだ…」
もちろん自分も含めてだったが、カラハグを倒すべくプラスになる情報が出ないことに微かに落胆する飛鳥井。
他のメンバー考えがあってかは分からないが黙り込んでしまった。
そんな重い空気の中、ベンチに座る結月の横で地べたに寝ていたチャラが不意に起き上がり、目線を正面家屋の上空に向けメンバーに伝える。
「吉報、かな?君達、もう暗い顔してあれこれ考えなくて済むみたいだよ。噂のラスボスが手下を引き連れてこっちに向かってるからね」
「なっ!?」
「ええーっ!?」
チャラの惚けた口調とは裏腹な内容にメンバー全員が驚き、慌てて猫の目線と同じ方方向へ目を向ける。
彼らの肉眼では、遠くの方に黒い点々としてそれは確かに映った。
飛鳥井と柴門が双眼鏡をそれぞれ手に取って確認する。
「間違いねぇな。カラスの群れの真ん中にいるのはカラハグだ…ん!?でもなんであいつら真っ直ぐこっちに向かって来るんだ?」
カラス王を確認した柴門の疑問はもっともなことであった。
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