僕達の世界線は永遠に変わらない [武士道]

僕達の世界線は永遠に変わらない

 

 ヴォルガは「巨漢」と云われるだけあって、同じく幹部だったキガイの一回りは身体が大きく、全長は6mに達しようかというほどの巨体であった。

 さらにキガイはしなやかで無駄の無い筋肉をしていたが、このヴォルガの腕は岩のように硬そうで太く、肉体的な攻撃による破壊力の凄まじさを容易に想像できる。まぁヒットすればの話だが…

「柴門君伏せてっ!」

「っ!?」

「バッ!」

「ブン!」

 八神の声に反応した柴門が咄嗟にその場に伏せ、その空間を背後から殴るかかったヴォルガのパンチが音を立てて空振りした!

 攻撃を避けられたヴォルガが、今度は伏せた柴門をつぶそうと左腕を振りかぶる!

「ズガァン!」

 伏せて直ぐに反転し、ヴォルガの所作を目視していた柴門がその攻撃を右に転がりかわした!

 柴門の代わりに攻撃を受けた屋根は粉々に砕け、半径1m以上の空洞ができる。

 もし、どちらか一撃でもヒットしていれば、彼の頭は原型を留めず破壊され即死していたかもしれない。

「やるねぇ、デカブツ。ちょっと焦っちまったじゃねぇか」

 柴門は転がった勢いでそのまま立ち上がり体勢を立て直していた。

「カッカァ。良く避けたな。今から死んでしまうのだからあまり意味は無かろうが名乗っておこう。我が名はカラス軍幹部が一人、巨漢のヴォルガだ。貴様も名乗って良いぞ」

 カラス軍幹部四人衆のうちキガイとリーベの二人はほとんど言葉を発することなく、チャラと匡の手によってこの世の者では無くなった。

 それに比べヴォルガは先制攻撃を仕掛け、なんと名乗ることさえ達成することに成功した。否、幹部という特別な存在なのだからこんな展開こそが普通であろう。

「…面倒臭いから名乗るのはやめとくわ。てめぇも俺のことは好きに呼んでくれて構わねぇよ」

 柴門のヴォルガに対する武士道魂的な礼儀心は微塵も感じない。
 無礼な態度を取られたヴォルガにしても、いきなり火がつき憤怒を表すようなことも無かった。

「では貴様の名は猿とでも呼んでおこうカァッ!!!」

「ボウッ!!」

 前言撤回!少なからずヴォルガの心中に火が灯っていたのか、良い終わりと共にクチバシを大きく広げその幅いっぱいの火球を吐き出した!

「鉄の壁っ!」

「ズオォッ!」

「ズッガッーーーン」

 全神経を集中して二人の様子を注視していた八神がまたもや柴門を救った!

 柴門はというと、至近距離にて突如吐き出された火球に反応し、後ろへ大きくバックステップを踏み、家の庭へなんとか着地していた。

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