飛鳥井らがディク率いるカラス部隊との戦闘を終結させた頃。
北から東へ向かった八神のチームは、カラス軍幹部四人衆の最後の一人ヴォルガ率いる部隊と対峙していた。
八神達の移動中にバッタリヴォルガ部隊に鉢合わせ、互いにその存在と位置を把握しているため、飛鳥井チームのような奇襲は出来そうにない。
平家の屋根上で四人が腰を低くして構え柴門が八神に問う。
「バッチリ見られちまってるな…今回はどうする?」
キガイに一撃で気絶させられていた八神は、葵のヒーリングによってすっかり回復していた。
「……とりあえず、葵さんと美琴さんには何処かへ隠れてもらおう。二人の能力は前線じゃなくても十分力を発揮してもらえるし切り札にもなるからね」
「そうね、それが良いかも。じゃあ、わたしと葵さんはあの二階建ての家に移動しましょ」
「…わたしはここに居るだけじゃ足手纏いになるしね。うん!そうしよ!」
八神の意見に賛同した二人が後ろの道を挟んでだ家に移動を始める。
「柴門君。二人が安全に移動できるように煙増し増しの爆煙を派手に上げてくれるかな?可能な限り広範囲に」
「了解!任せろ!スモークボム乱舞!」
素直に八神の指示に従う柴門。
技の性質上、爆発力でなく単に爆煙をあげるだけのスモークボムは能力の消費量が少ない。
「ボボボボボボボボボボボボボ!」
「ボウン!ボウン!ボウン!ボウン!ボウン!」
柴門が50発を超える光球を地上には向けて放ち、次々に爆煙を起こし、立ち込める煙によって二人の前面180度は視界ゼロとなった。
当然、500mくらいの距離を置いて四人を眺めていたカラス部隊の姿も二人には全く見えない。
「ケホッ!ケホッ!能力で出現させた煙だけどやっぱりリアルに煙いね」
「ケホッ!だな。悪い、大盤振る舞いで派手にやり過ぎちまった」
八神と柴門があまりの煙量ので、涙目になりながら服の袖で鼻と口を押さえる。
そしてやや張り切り過ぎた柴門が遠くから聴こえた何かに気付き叫ぶ!
「前から何か来るぞ!」
声に反応した八神が即座に動いた!
「守れ!アイアンウォール!」
「ズオォッ!パキーン!」
二人の前方3mに100cmもの分厚い鉄の壁が現れる!
「ズッガァーーーーーーーン!!!!」
直後に鉄の壁に直撃した何かが赤く起爆した!
「ふいぃ、八神さんナイス判断!間一髪セーフだったな」
八神の前に立つ柴門が後ろを振り向きグッジョブポーズをとったが、八神の目は彼を見ては居なかった。
振り向いた柴門の背後に巨漢のヴォルガの姿があったのである…
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